国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指し、グリーンイノベーション基金事業の一環として、脱炭素化の実現に必要不可欠な再生可能エネルギーの主力電源化へ向けて太陽光発電の普及を後押しする「次世代型太陽電池の開発」の6プロジェクトを採択し、着手する。
耐荷重の小さい工場の屋根やビル壁面など既存の太陽電池を設置できない場所への導入に向け、軽さや建物の曲面などにも設置できる柔軟性を持たせるだけでなく、変換効率や耐久性などの性能面でも既存電池に匹敵する次世代型太陽電池「ペロブスカイト」の実用化を目指す。
政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げた。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要がある。
NEDOに2兆円の基金造成
このため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げた。
この基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定した重点分野を支援対象としており、その一つとして太陽光が挙げられている。グリーン成長戦略は、日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日に経産省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定した。
産学連携で6プロジェクト
日本では平地が少なく、地域と共生しながら安価に太陽光発電事業を実施できる適地が不足しているという課題を解決し社会実装につなげるため、NEDOはグリーンイノベーション基金事業の一環として「次世代型太陽電池の開発」の公募を行い、脱炭素化の実現に必要不可欠な再生可能エネルギーの主力電源化へ向けて太陽光発電の普及を後押しする6プロジェクトを採択した。
採択したのは、積水化学工業(株)・東京大学・立命館大学による「超軽量太陽電池 R2R 製造技術開発」、(株)東芝・東京大学・立命館大学による「フィルム型ペロブスカイト太陽電池実用化技術」、(株)エネコートテクノロジーズ・京都大学による「設置自由度の高いペロブスカイト太陽電池の社会実装」、(株)アイシン・東京大学による「高効率・高耐久モジュールの実用化技術開発」、(株)カネカによる「高性能ペロブスカイト太陽電池技術開発」、国立研究開発法人産業技術総合研究所による「次世代型ペロブスカイト太陽電池の実用化に資する共通基盤技術開発」の6事業。
NEDOでは、事業を通じて、耐荷重の小さい工場の屋根やビル壁面など既存の技術では太陽電池を設置できなかった場所にも太陽光発電を導入するため、軽さと建物の曲面などにも設置可能な柔軟性などを持たせ、変換効率や耐久性などといった性能面でも既存電池に匹敵する次世代型太陽電池(ペロブスカイト)の実用化を目指す。
実施期間は2021年度~2025年度。予算額は全体で498億円のうち200億円を予定している。