北海道大学大学院工学院研究グループは、わが国伝統工芸品として今なお愛される竹でつくられた釣竿や竹竿の力学的合理性を解明することに成功した。天然素材の利活用に関する伝統的・科学的知識体系が紡ぐ新しいものづくりにつながることが期待される。
生物は長い歳月をかけ、自己の形質をその生育環境に適したものへ変えていく。この進化の過程で、生物が獲得した特異な〝形〟には力学的に多くの意義が含まれている。なかでも竹は目を見張る構造的性質を多々有す植物であり、日本人の祖先も軽くしなやかな性質を活かし構造材や日用品など幅広い利用を行ってきた。
竹を使った日用品の一つに研究対象となった竹竿がある。竹竿は竹が繁茂するわが国での釣竿の原点とされ、繋がりは非常に深いものであるといえる。
ここ数年、釣竿は複合材料の採用によって主にその材料面における目覚ましい発展を遂げた。しかし、基本的設計概念は釣竿の長い歴史の中で変わることがない。
研究では,竹竿の「テーパー(先細り)構造」と「中空構造」に焦点を当て、両者が織りなす力学的合理性を明らかにした。また、注目を集めているバイオニックデザインへの新たな知見を提供するだけでなく、先人たちの天然素材に対する深い造詣と高い技術力を現在の人々に再認識させるものとなっている。