海遊館(大阪市)と近畿大学総合社会学部、医学部、理工学部からなる文理横断研究チームは、海遊館での鑑賞体験時の心理的効果を検証する研究調査を実施する。生き物や水中環境の展示を観賞した際の心理的変化を数値化し、来館者の心理や感情の変化を研究することで、居心地のよい空間づくりに応用する予定。まずは第一弾として、2月2日から4日に、海遊館で撮影した動画を用いたWEB上でアンケート調査を行った。
この取組は、海遊館と近畿大が平成30年(2018年)4月に締結した包括連携協定の一環として実施するもの。
海遊館には、来館者から「海遊館に行くと癒される」「元気が出た」「水槽を見たらリフレッシュできた」、といった感想が寄せられることが多くある。このことから、水族館の価値は生き物を観察し、学び、親しむといった機会の提供にとどまらず、人々の心理によい影響を与えるということが考えられる。
今回、海遊館と近畿大学の包括連携協定をきっかけに、さまざまな分野の研究者が参画し、ストレスを蓄積しやすい現代社会で、水族館の生き物や水中環境の展示が来館者の心理にどのような変化をもたらすかを科学的に検証する。
近畿大総合社会学部、医学部、理工学部を中心とした文理横断研究チームが、コロナ禍でも実施できる研究デザインを立案し、まずはWEB上でアンケート調査を実施する。調査では、海遊館のさまざまな生き物や展示環境の短い動画を観賞したうえで、動画の特徴や動画から受ける印象に関するアンケートに回答してもらう。
動画は、小魚の群れとジンベエザメが遊泳する様子、クラゲが漂う様子、アザラシの寝姿など、これまでの予備調査をもとに、海遊館が撮影した11種類を使用する。
今回の動画を用いて、それぞれの特徴を数値化する解析を行い、アンケート調査の結果と合わせることで、これまで想定していなかったような水槽ごとの類似度、相違点など関係性を分析する。
そこから、水槽ごとの特徴が観賞時にどのような印象をもたらすのかを、調査で得られたデータに基づき明らかにする予定。海遊館では、それを居心地のよい空間づくりに応用し、将来的には水族館がもたらす効果をメンタルヘルス分野へ生かすなど、新しい価値の提供につなげていきたいと考えている。