東京医科歯科大学の「入院患者由来SARS‐CoV‐2全ゲノム解析プロジェクトチーム」は、昨年12月下旬から今年1月上旬までに同大病院に入院したCOVID-19患者6人の全ゲノム解析を行った結果、6名中5名はオミクロン株であることを確認した。さらにオミクロン株だった5名中4名は、オミクロン株の中で追加変異が存在し、残りの1名はその変異がない系統株であることが確認された。この調査結果は、昨年12月に国内に存在していた複数のオミクロン系統株の中でも、変異を有する系統株による市中感染拡大が現時点で起こっていることを示唆するものと考えられる。
また、同大で確認されたオミクロン株も含め、国内で確認されているオミクロン株は海外から流入した可能性が極めて高いことから、世界のどこの地域で確認されたオミクロン株が流入してきたのかを解析するために、世界各地域(アフリカ地域、ヨーロッパ地域、アジア地域、北米地域の計4大地域)と、同大で確認した二つの異なるオミクロン株を用いた全ゲノム分子系統を解析。北米地域で確認されたオミクロン株に一番似ている(近縁)ことが判明した。
一方、今回の全ゲノム解析で確認されたデルタ株感染患者1名については、デルタ株であることを確認したが、こちらは昨年8月の第5波から今日に至るまで市中に存在している系統株の中で、わずか1%以下の割合で存在しているデルタ系統株であることが明らかとなった。
この結果は、昨年8月の第5波以降も当該系統株が国内で長期間存続していることを示しており、また、患者が重症化に至ったことから、依然として高い重症化リスクを保持しているデルタ系統株であると考えられる。
この調査を行ったのは、東京医歯第大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明准教授・病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教、ウイルス制御学分野の北村春樹大学院生と多賀佳大学院生ら。統合臨床感染症学分野の具芳明教授、木村彰方理事・副学長・特任教授と京都府立医科大大学院分子病態感染制御・検査医学分野の貫井陽子教授(前医学部附属病院感染制御部部長)との共同解析を実施した。