豊橋技術科学大学と東京大学の研究チームは、360度動画を用いて座っている観察者のためのバーチャル歩行システムを開発し、歩行感覚や地面の材質の知覚が、シーンに調和した振動によって強化されることを明らかにした。同システムを用いると、さまざまな360度動画をリアルなバーチャル歩行体験に変換することができる。
歩行は、人の心身の健康を増進させることが期待できます。しかし、身体的な障害やCOVID-19の影響などによって、外を歩くことが困難な場合がある。豊橋技科大の研究チームは、東京大の研究者と共同で、360度動画とシーンに合わせた足裏への振動を利用した、座っている人のためのバーチャル歩行システムを開発した。
足裏振動のタイミングは360度動画(全天周動画)から自動的に計算される。実験の結果、リズミカルでシーンに調和した振動は、歩行感覚や地面の材質感を向上させることがわかった。同システムを用いると、さまざまな360度動画をリアルなバーチャル歩行体験に変換することができる。この研究は、12月20日にIEEE Access 誌に掲載された。
バーチャルリアリティを用いることで、歩行障害のある人やCOVID-19流行下でも、人にリアルな歩行体験を提供することができる。しかし、多くのバーチャル歩行システムでは、そのシステム専用にカスタマイズされたコンテンツしか体験できない。
豊橋技科大と東大の研究者らは、360度動画をバーチャル歩行体験に変換し、適切なタイミングでシーンに調和した振動を足裏に与えるバーチャル歩行システムを提案した。実験では、四つの地面のシーンに対して調和した振動パターンを用意。調和した振動と調和していない振動によって、歩行感覚や地面の材質の知覚が変化するかどうかを心理学的測定法で検証した。
その結果、足裏へのリズミカルな振動は、シーンと振動の調和性・整合性に関わらず、自己運動、歩行、脚の動作、テレプレゼンス(遠隔臨場感)の感覚を改善することが明らかとなった。
さらに、室内の廊下や雪の地面のシーンでは、調和した振動が不調和の振動よりも歩行関連の感覚やテレプレゼンスを向上させることがわかった。また、地面の質感は、シーンと振動が調和していると強調され、逆にシーンと振動が調和していないと混乱して知覚された。