山口大学大学院共同獣医学研究科3年の井中賢吾さんと指導教員の木村透教授は、「白狐が見つけた美肌の湯」の故事に倣い、温泉入浴効果をカピバラによる動物実験で、主として皮膚科学領域から証明した。
湯田温泉は、1200年前から知られる非火山性温泉で、肌によく馴染むやわらかい湯が特徴と謳われている。非火山性温泉でありながら、湧出時の温度は72-76℃と高温であることも湯田温泉の特徴で、加熱など手を加えることなくそのままのフレッシュな温泉水として利用できる。
動物園動物として人気の高いカピバラは、温度湿度の高い南米アマゾン川流域の湿原に生息するげっ歯類。日本の冬期には、寒さを和らげるためにお湯に入浴させることがイベントとして行われてきたが、湿度の低下により皮膚が乾燥して肌荒れを起す現象も認められている。
この研究では、この乾燥した皮膚の状態を温泉入浴により改善できるかに着目し、カピバラを21日間温泉入浴させ、皮膚性状、リラクゼーション効果および保温効果を調べ、肌荒れ改善を検証した。
温泉療法の科学的裏付けは乏しく、ヒトへの健康増進・未病に結びつく動物実験による実証データはこれまで得られていなかった。動物で確認される温泉の効果はヒトにも適用できると考えられ、温泉の効果を科学的に解明することで、健康維持・増進や今後の長寿社会への貢献が期待される。