2021年11月1日 【電通大】囲碁AIの応用研究開発へ 大会運営で寄付金を募集

AI(人工知能)が人間のトッププレイヤを超えるようになった囲碁・将棋の世界では、藤井聡太三冠に代表されるように、AIと戦うという形からAIをパートナーとして活用しながら自らのレベルアップ(知の拡張)を図ることがすでに日常になっている。

日本棋院と提携している電気通信大学の「エンターテイメントと認知科学研究ステーション」は、ミュージックセキュリティーズ㈱と連携し、囲碁AIを題材とした人間の知を拡張する応用研究開発、さらに、この研究開発を支える囲碁AIの技術交流を目的としたUEC杯コンピュータ囲碁大会運営のため、寄附金を募集している。

ゲーム技術用いて人間の知を拡張

「電通大エンターテイメントと認知科学研究ステーション」は、2006年の設立以来、囲碁AIをはじめとする最先端のゲームAIの研究を進めてきた。このなかで、ここ数年特に力を入れているのが『ゲームAIを用いた人間の知の拡張』。このプロジェクトでは、囲碁AIに代表されるゲームAI技術を用いて人間の知を拡張し、未だ到達しえない新たな境地へ到達する技術を切り拓くことを目指している。

また、このような教育研究活動を推し進めるために、毎年3月に開催の「UEC杯コンピュータ囲碁大会」をはじめとする囲碁AI技術の振興の場をコロナ禍でも絶やすことなく開催し続けている。

「UEC杯」の特徴は、参加者の交流にある。参加者同士が一同に会し、技術交流を行える場としては、世界的に見てもこの大会が最大規模を誇る。同ステーションでは、今後もこの大会を継続的に開催することの意義を強く訴えていくこととしている。

グーグルが開発AI、2015年にプロ囲碁棋士破る

2015年にグーグルが開発したAlphaGo(アルファ碁)が、人間のプロ囲碁棋士を破って以降も、世界で囲碁AIは進化を続けている。クラウドを利用したハードウェアが比較的安価で入手できるようになり、ディープラーニング(深層学習)を応用した囲碁AIはAlphaGo以降も進化し続けており、開発者の裾野は広がっている。

この分野で得られた技術は囲碁AIにとどまらず、さまざまな分野に応用されている。特に、深層学習や膨大な探索に基づくAI技術は、必ずしも人間の思考過程とは相容れないものであることが多い。人間に理解しやすい表現で提示したり、学習支援に応用したりする技術は、今後人間を超えるAIがさまざまな分野に登場したときに重要な技術になると想像される。

この分野の研究を活用することで、ここ数年、中国や韓国に後塵を拝してきた日本の囲碁界全体の底上げが期待され、囲碁界だけでなくさまざまな競技分野で世界に伍する人材の育成に役立つものと考えられる。

プロジェクトを統括するエンターテイメントと認知科学研究ステーション長である電気通信大学大学院情報理工学研究科の伊藤毅志准教授は、「2045年にAIの能力が人間の能力を超えるというシンギュラリティ問題に人類が直面するときに、パートナーとしてのAIとの新しい関係を構築することが必要。特にAIによる人間の知の拡張、つまり、人智を超える極みを、今、囲碁を題材とした分野で研究しておくことが、この分野のベンチマークとして重要になります」と話している。

寄附金の募集は来年2月28日まで行っている。募集Webサイトhttps//academia.securite.jp/donation/detail?c_id=12

 


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