近畿大学建築学部の平栗靖浩准教授は、日本ミシュランタイヤ㈱(東京都新宿区)による協力のもと、大阪府東大阪市の自動車騒音に関する環境騒音マップを製作し、Webサイトで公開した。環境騒音マップのWebサイトでの公開は日本初の試みで、今後は対象を拡大し、日本全国のデータや鉄道・航空機騒音も含めた総合的な情報の提供を目指す。今年度内に政令指定都市を含む複数の都市の環境騒音マップを公開予定。
騒音は、健康面だけでなく経済にも影響を及ぼす公害。欧州では「Directive 2002/49/EC」の発令により、都市部の環境騒音マップの推計・描画・公開が義務づけられており、自動車、鉄道、航空機、工場を騒音源とした環境騒音マップを公開して騒音政策に生かしている。
米国でも同様に、自動車、鉄道、航空機を騒音源とした環境騒音マップが公開されている。日本では、大気汚染マップや各種ハザードマップは公開されているが、環境騒音マップは未整備で、騒音に関する規制は欧米に比べて遅れているのが現状。
「Directive 2002/49/EC」は、〝欧州環境騒音指令〟とも呼ばれている。EU加盟国で25万人以上の人口密集都市全域に対して、自動車や鉄道、航空機騒音などの曝露状況をマップ化し、騒音曝露人口(何dBの騒音に何人が曝露されているか)の推計や、それをもとにしたアクションプラン(政策)の立案等が義務付けられている。
騒音の程度を色で表現
こうした現状を踏まえて、平栗准教授は、環境騒音の推計システムを開発し、近畿大のキャンパスがある東大阪市を対象とした環境騒音マップを製作した。今回Webサイトで公開したそのマップは、国が実施した「平成27年度全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)」のデータをもとに、調査対象である一般道路について24時間の交通量と車速から騒音レベルを推計し、騒音の程度を青色から赤色で示している。
現時点では東大阪市の一般道路に限定した情報となっているが、今後継続的にデータを集め、令和3年度(2021年度)内に政令指定都市を含む複数の都市の環境騒音マップを公開することを予定している。
環境騒音マップの公開によって、住居選択時に活用できるとともに、エビデンスの質が高い情報として研究面で役立てることができ、自治体等にとっても騒音対策に関する政策決定の際に参考にすることが可能となっている。