2021年10月4日 「通い農業支援システム」製作マニュアル公開 安価かつ簡便にハウスの情報をスマートフォンで確認

農研機構は、「通い農業支援システム」の製作方法を説明したマニュアルをウェブサイトで公開した。このシステムは、通信機能付きマイコンと小型パソコンを組み合わせ、ハウスの情報をスマートフォンで確認できる遠隔監視システム。ハウス内の温度などを定期的に確認できるほか、取得データは平均値やグラフなど生産者が利用しやすいように変換できる。材料費2万円から作成可能。このマニュアルにより、安価かつ簡便に「通い農業支援システム」を製作することでハウスの管理を省力化することができる。

東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経過し、大規模水稲生産法人や施設園芸農家等を核に営農再開が進んでいるが、労働力の確保や担い手不足の問題が被災地では特に深刻な状況となっている。また、居住地から離れた場所へ「通い農業」を行っていたり、生産者の管理するハウスが分散している事例もある。このため、遠隔地での農業再開のためには、リモートで生産現場の状況を確認することが可能な技術を開発する必要がある。

一方、市販のハウス遠隔監視システムは、通年で運用することを前提としており、水稲の育苗などの一時的な利用には適しておらず、被災地での運用はコスト的に見合わないことから、省力化のためにハウス遠隔監視システムの導入を検討している生産者も気軽に試すことができなかった。そのため、「通い農業」の負担を持続的に軽減できる技術として、安価かつ簡便に運用できるIoT技術が求められていた。

近年、スマート農業を支えるIoT技術に用いられるマイコンやセンサの価格が急速に低下したことから、遠隔監視システムを安価に自作する生産者も現れている。しかし、依然として生産者にはハードルが高い状況である。そこで農研機構は、生産者が安価かつ簡便に製作でき、スマートフォンで気軽にハウス内の状況を確認できるような遠隔監視システムを開発し、製作マニュアルとしてとりまとめた。

 

「通い農業支援システム」の特徴

「通い農業支援システム」は、ハウスに設置した通信機能付きマイコンで温度などの情報を取得し、小型パソコンで収集したデータをスマートフォンへ通知する。

このシステムは、専門的な知識や技能を必要とせず、スマートフォンやパソコンを操作できるなどの一定の知識があれば、製作マニュアルの手順に従うことで、ハードについては市販品を組み合わせ、ソフトについては配布プログラムを利用して、水稲育苗ハウスや園芸ハウスの温度などの情報を遠隔監視するシステムを作ることができる。

また、スマートフォン向けのメッセージアプリ(LINE)に通知することができるため、専用のアプリケーションを必要としない。マニュアル内の事例集には、「ほ場や自宅などどこにいても、いつでも家族や法人内で情報や指示を共有することができる」といった実際の使用事例が記載されており、導入前の参考になる情報が掲載されている。

さらに、マニュアルでは、取得したデータを定期的に通知するプログラムのほか、栽培上の異常値が発生した場合に警報通知を行うプログラムを作成できる。取得したデータを小型パソコンに保存することで、日平均値や最大値、最小値やグラフなど生産者が利用しやすい形で通知するプログラムも用意されている。

加えて、マニュアルでは、ハウス1棟から6棟に導入する際のコスト試算が掲載されている。例として、マイコンと温度センサを1組製作するのに材料費約4000円、温度センサを1つ設置した際の1棟分のハウス遠隔監視システム一式の材料費は約2万円程度で、市販のハウス遠隔監視システムに比べて非常に低価格である。自宅のWi‐Fiを使用すれば通信費はかからないが、別途用意する場合の通信費は一月あたり約1000円である。

営農再開地域だけでなく、労働力の確保や担い手不足に悩む地域の生産者にとって、スマート農業の1つであるこのシステムによるハウスの遠隔監視を導入することで、見回りなどの管理を省力化し営農を継続する一助となることが期待される。

 

通い農業支援システムのイメージ(プレスリリースより)


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