国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)を東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)での空域統制に導入や運用支援を行い、警察庁が主導する安全かつ円滑な警備体制の構築に貢献した。
旅客機用の管制システムではカバー困難
従来大規模イベントの空域統制では、旅客機用に整備された管制システムではカバーできない空域を飛行する政府機関機(警察、消防、海上保安庁等)、民間機関機、不審機等をリアルタイムに監視することが困難であるという課題がみられた。
この状況に対処するため、東京2020大会では、警察庁からG20大阪サミットや即位行事で実績のあったD-NETの導入や運用支援に関する要請を受け、協力が実現した。
D-NETの導入により、500機以上の機体の運航計画をD-NET画面上で事前に短時間で確認・調整することが可能になる。さらに、飛行中もリアルタイムに監視し、警備や報道目的等の制限空域内の飛行を許可された機体の運航状況の把握、また、許可を受けずに飛行している不審機の早期発見が可能となり、東京2020大会の安全かつ円滑な運営に貢献することができた。
またD-NETは、今回の東京2020大会で警察庁と民間企業の協力のもとで初めて政府機と民間機の運航情報をD-NETで共有化する体制が構築されたことにより、軍事目的を除く民間分野で世界に類をみない運航管理・情報共有システムが実現した。
この成果は従来、災害時や警備・警戒時に課題となっていた政府機と民間機の安全かつ効率的な空域の共有・活用のための技術や体制の確立に繋がるもの。
今後、災害対応や警備・警戒現場への導入が増えるドローンの運航管理システムとの連携も拡大し、有人機と無人機が同じ空域で協調して活動できる環境を構築するなど、安心・安全な空の社会の実現に向けた研究開発を進めることとしている。