2021年9月10日 【北陸先端大】高感度新型コロナの迅速簡便な検査法開発に成功 高度な機器不要でPCR品質の検査を15から30分で可能に

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)とJAIST発のベンチャー企業であるBioSeeds(バイオシーズ)㈱(石川県能美市)、さらに複数の研究機関からなる研究者チームは、唾液から直接、極めて微量の新型コロナウイルスを検出できる高度な等温核酸増幅法(RICCAテスト)を開発した。この方法は、シンプルなワンポット(一つの容器だけを用いる)方式のRNAウイルスの等温核酸増幅検出法で、高度な機器や、特別な実験室・検査室を必要としない。このため、検査室にサンプルを送る必要がなく、総測定時間15~30分で、その場で即時に検出結果を得られる。研究チームはこれまでに、唾液中の低コピー数の新型コロナウイルスの直接検出に成功している。今回の調査法開発を受けて、その場検査や、検査設備を簡単に調達できない地域等での検査手段として、実用化を目指している。

パンデミックの制御に不可欠「高感度・高信頼性の検査法」

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を食い止めるための最も効果的な方法は、症状のあるなしにかかわらず、感染の疑いのある人を特定して隔離すること。アルファからデルタまでの4種の懸念される変異株とイータからミューまでの5種の注目すべき変異株が数カ月のうちに世界中に広まったように、新しい感染性ウイルス株が急速に出現しているため、新型コロナの迅速かつ高感度で信頼性の高い検査法の利用は、病気、さらにはパンデミックの制御に不可欠となっている。

現在、主にRT-PCRによる検査が行われているが、この検査室を必要とする方法は、サンプルの前処理が必要であることや、高価な装置(蛍光光度計付きサーマルサイクラー)が必要なことから、現場での検査は難しく、また短時間での大量検査にも課題がある。

PCRに類似した分子検査を行う方法として、LAMPなどのさまざまな等温核酸増幅法が現在使用されているが、これらの方法は、PCRと比較して特異性や感度が低いことが報告されている。また、これらの方法の多くは、実験室でのウイルスRNAの分離、溶解、精製、増幅など、面倒な前処理を必要する。

現行検査より安価、広範囲な用途に適用可能

 この問題を解決するために、JAISTのマニッシュ ビヤニ特任教授率いるチームは、ウイルスRNAの標的配列を、特別な装置を必要とせず、現場で正確に検出できる高感度かつ超高速な方法を開発し、この検出法をRICCA(RNA Isothermal Co-assisted and Coupled Amplification)と名付けた。

 現在、RICCAを使用して、すでにアルファ株とデルタ株の二つの変異株を検出しており、他の変異株にも適応可能と考えられる。RICCAアッセイに必要なものは、ヒートブロック(恒温槽)と、25種類の試薬を含む混合液があらかじめ入ったチューブだけ。RNA特異的増幅とDNA特異的増幅を同時に行うことができる。

RICCAのコストは現在のRT-PCR法等と比較しても安価で、より広範囲な用途に適用可能と考えられます。したがって、RICCAにより、新型コロナ分子診断の「ラボフリー、ラボクオリティー」のメガテストプラットフォーム(医療検査室レベルの集団検診に向けた基本的な方法)も実現できる可能性がある。また、将来的には、このプラットフォームを使って他の感染性ウイルスを検査することも可能。


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