東京医科歯科大学の研究グループは、今年8月中旬の新型コロナウイルス感染症患者から検出したデルタ株から、アルファ株主要変異(N501Y)の類似変異であるN501S変異を有する新たなデルタ株の市中感染事例を確認した。分子系統解析の結果、N501S変異を有する当該デルタ株は、国内で新たに変異を獲得した可能性が極めて高いことがわかった。この患者と接触歴のある人から、ワクチン接種歴のある人へのブレイクスルー感染伝播事例を確認。N501S変異を有する新たなデルタ株は、少なくとも市中流行デルタ株と同等の感染伝播能力を保持していることが考えられるとしている。
この分析を行ったのは、東京医歯大大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明准教授・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ助教、ウイルス制御学分野の北村春樹大学院生と、多賀佳大学院生らによる同大入院患者由来 SARS-CoV-2全ゲノム解析プロジェクトチーム。統合臨床感染症学分野の具芳明教授、木村彰方理事・副学長・特任教授と貫井陽子医学部附属病院感染制御部・部長との共同解析を実施した。
7月中旬以降、【L452R変異】を有するデルタ株の市中感染事例が急増し、【N501Y変異】を有するアルファ株の感染事例が激減したことが認められた。その結果、8月中旬以降は市中流行株の大半がデルタ株で占められる状況となっており、依然として市中感染状況維持の様相を呈していることから、さらに強固な感染拡大防止対策を講じる必要性に迫られていると考えられる。