バーチャルリアリティ用ハッドマウントディスプレイ(VR HMD)の普及によって、ヒトの知覚認知機能をVR空間で検討することが容易となり、心理学・生理学・工学などさまざまな分野でVRを利用した研究が世界的に増加している。しかし、VR HMDによる映像表示や音の再生(刺激呈示)が、従来の実験環境と同じように正確か、具体的にどれほどの精度を持つのかは未解明で、得られる研究データそのものが正確かどうか不明確なため、精度の実証が期待されていた。
東北大学大学院情報科学研究科の立花良助教と松宮一道教授は、実験制御で推奨される Python言語環境を用いて、ここ数年主流のVR HMDでの刺激呈示精度を解明した。特に、遅延がほぼ生じない従来の実験環境に対して、HMDでの映像表示では一貫して約0.02秒、音の再生には最大で0.06秒の遅延が生じることを実証した。
この研究により、現在のVR研究での実験手続きの正確性に警鐘を鳴らすとともに、今後のVR実験に必要な精度指標値を国際的に提供することができた。
この研究成果は、8月3日付で国際学術誌「Behavior Research Methods誌」(電子版)に掲載された。