国立研究開発法人産業総合研究所と北海道大学の研究グループは、二酸化炭素(CO2)を原料としたアルコール連続生産技術を開発した。この技術では、CO2と水素をプロピレンに反応させてアルコールの一種であるブタノールに変換する機能を持つ金属錯体触媒をイオン液体によってシリカゲル上に固定化して固体触媒とした。この固体触媒をフロー式反応装置に設置して反応を行うことにより、原料から連続的にブタノールを生産することが可能になった。化学産業におけるCO2の有力な利用先として期待されるとともに、カーボンリサイクルの推進に貢献する。この技術の詳細は、8月25日(米国東部標準時間)にアメリカ化学会が発行する「ACS Sustainable Chemistry & Engineering誌」(オンライン版)で発表されている。
この技術開発を行ったのは、産総研触媒化学融合研究センター官能基変換チームの富永健一研究チーム付と北大触媒科学研究所の西田まゆみ教授。
脱炭素社会提唱で求められるCO2利用技術
脱炭素社会が提唱されるなか、発生したCO2を利用する技術の開発が求められている。化学産業でも、特にCO2を直接原料として用いた新しい化学品合成プロセスが期待されている。
ヒドロホルミル化反応(オキソ反応)は、石油化学産業における基幹プロセスの一つで、年間1000万トン以上のアルコールやアルデヒドがこの反応を用いて製造されている。従来この反応では、プロピレンなどの不飽和炭化水素、一酸化炭素(CO)、水素を原料として用い、コバルトやロジウムの金属錯体を触媒としてバッチ式の反応釜で反応が行われてきた。
このような金属錯体触媒を用いたバッチ式のプロセスでは、連続生産ができないという課題に加え、反応後の触媒と生成物の分離や触媒の再利用に課題がある。これらの課題を解決するため、金属錯体を固体担体に固定化し、固体触媒の様に利用する手法がこれまでいくつか提案されてきたが、金属錯体触媒を単独で使用する場合と比べて反応性が変化することや、耐熱性が低いなどの課題があった。