九州大学と日本電気㈱(NEC)が開発した「My-IoT開発プラットフォーム」が、東京都の「大学研究者による事業提案制度」に採択されたテーマ『AIとIoTにより認知症高齢者問題を多面的に解決する東京アプローチの確立』」(東京アプローチ)を実現するシステムのエッジコンピューティングプラットフォームとして㈱ケアコムに採用され、今年9月から稼働を開始する。エッジプラットフォームは、利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置(エッジプットフォーム)を分散配置して、ネットワークの端点でデータ処理を行う環境を示す。
認知症患者のQOL維持と介護家族の負担軽減目指す
「My-IoT開発プラットフォーム」は、内閣府が実施する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」(管理法人:NEDO)でNECと九大が技術開発したもの。
IoTが普及していない国内の産業・地域などで、IoT利用者自身がローコードで簡単にIoTシステムを構築してデジタル化の価値を検証し、新規ビジネス創出につなげることを目的としたエッジコンピューティングプラットフォーム。
同プラットフォームを軸としたコンサルテーション、業者間のマッチング、教育などの社会実装支援ならびに普及活動を担うMy-IoTコンソーシアムが、技術開発と社会実装の両輪で取り組みを進めている。
今回、同プラットフォームの初採用となる東京アプローチは、電気通信大学が中心となって提案するテーマで、認知症患者のQOL(Quality of LIFE)を維持させるとともに、認知症患者のケアを担う介護士や家族の負担を軽減することを目指している。
具体的には、認知症患者に装着されるウェラブルセンサや居室に置かれた各種のセンサとエッジコンピューティングとAIシステムを連動させ、認知症患者を見守るだけでなく、認知症特有の行動症状や心理症状であるBPSD(認知症の行動・心理症状)の予測を自動的に行い、介護士へ通知してケア手法を提示するもの。
セーフティマネジメントシステム構築へ
同システムは、早期の社会実装を目指すため、安価かつ短期間で構築する必要があった。また、認知症患者のバイタルデータ、居室の環境データ、介護記録など、認知症患者にまつわるパーソナライズされた多種多様なデータを、安全に収集し処理するエッジコンピューティングプラットフォームを必要とした。
さらに、エッジ処理に加え、機器のリソース管理や、多数のエッジのプログラムをリモートで配信・管理するための機能も求められていた。
そこで、同システムのエッジコンピューティング部分の開発を担当しているケアコムは、これらの要件に適した「My-IoT開発プラットフォーム」を採用。ケアコムは、同プラットフォームを活用することで、東京都アプローチで、認知症予防を実現するためベッドサイドと室内環境の情報収集を行い、通知情報と突合した行動予測を実施する。
今後は、この東京アプローチの方向性であるデータの蓄積と予測をさらに強化し、医療・介護だけでなく家庭での安全・安心の提供を目指して、蓄積された情報の解釈とその利活用を前提としたセーフティマネジメントシステムの構築を目指す。