大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学の玉井孝司病院講師、西野壱哉大学院生らの研究グループは、ここ数年国内でも爆発的に普及している加熱式タバコが燃焼式タバコと同様に細胞生存率を低下させ、骨分化、骨癒合の阻害をもたらすことを明らかにした。
燃焼式タバコの骨癒合への悪影響については広く知られているが、加熱式タバコは体へ及ぼす害が少ないと一部では信じられている。
そこで、研究グループは加熱式タバコが骨癒合に与える影響を基礎的研究にて明らかにすることを目的に、燃焼式、加熱式でそれぞれタバコ抽出液を作成して前骨芽細胞に投与し、細胞生存率と骨分化誘導条件下における阻害作用を評価した。
また、ラットの大腿骨骨切りモデルに対してもそれぞれの抽出液を投与し、4週間後に骨組成、仮骨体積と力学強度を測定した。その結果、細胞生存率は両群共に時間、濃度に依存して有意に低下。骨分化モデルでは、両群ともにALP活性が対照群より有意に低く、動物実験では、骨塩量、仮骨体積、また力学試験における最大荷重、弾性率が両群共に対照の抽出液を投与しない群より有意に低下した。
この研究結果から、玉井講師らは、骨折治療中や骨癒合を必要とする手術に際しては燃焼式タバコだけではなく加熱式タバコの禁煙も勧めるべきであるとの見解を示している。
この研究成果は、8月11日に『The Journal of Bone and Joint Surgery』(IF=5.284)にオンラインで先行掲載された。