大阪市立大学大学院工学研究科の仕幸英治教授らの研究グループは、薄さが数十ナノメートルの磁性膜を使用した電磁波から電気エネルギーへの変換現象により発生する電圧を利用して蓄電することに成功した。これまでの先行研究で、強磁性共鳴下では磁性膜にマイクロボルト程度の電圧が生じることが明らかにされていた。そこでこの仕幸教授らは、この起電力を活用し、鉄‐ニッケル合金と鉄‐コバルト合金という2種類の膜材料を用いて蓄電を試みた。その結果、膜材料の種類により蓄電が可能な場合と難しい場合があり、発熱をしても磁石の性能を失いにくい膜材料のほうが安定した蓄電が可能であることが明らかになった。
強磁性共鳴による起電力は原理的に全ての周波数の電磁波において生成可能なため、この研究成果を活用することで、スマートフォンやパソコンなど身の回りのあらゆる周波数の電磁波から蓄電できる可能性が示された。
この研究成果は日本時間8月11日に国際学術誌「AIP Advances」にオンライン掲載された。
資源に乏しいわが国では、環境に負担をかけずに限りある資源を有効活用する技術が求められている。ここ数年、地球上に存在する微小エネルギーを集め、それらを新たなエネルギー資源として利用する「エネルギーハーベスティング」が注目されている。この技術は発電所とは異なり、エネルギーシステム当りで得られる電気量は大きくはないものの、利用方法次第では電子デバイスを動かすには十分なポテンシャルを有しており、光や熱、振動、電磁場およびそれらの関連現象を使うさまざまな開発が進行している。
研究グループは、磁性膜の強磁性共鳴現象を直接利用するエネルギーハーベスティングに着目。これまでに強磁性共鳴状態の磁性膜にマイクロボルト程度の電圧が生じることや、その起電力の起源の解明が行われた。
この研究ではこの起電力生成現象による蓄電を試み、エネルギーハーベスティング技術としての可能性について実証実験を行った。