電気通信大学の研究者チームは、8月1日から同大体育館を会場として調布市が実施するワクチンの集団接種で、通常の新型コロナウイルス感染症対策に加え、会場内の二酸化炭素(CO2)濃度や温湿度などの各種IoTセンサによる三密・熱中症リスクのモニタリング、AI人流センサによる安全管理に関する実証実験を行っている。
新型コロナウイルスの感染拡大予防のためは、「接触」「飛沫」「飛沫核」といった感染経路毎に、複数の対策を講じることが重要とされている。昨今、室内CO2の濃度を計測・可視化することにより室内の換気状態を良好な状態に保ち、たとえ空気中に「飛沫核」が存在したとしても、これを逸早く排出させる手法が注目されている。
電通大はこれまで、調布駅前商店街との共同実証実験により、飲食店・学習塾・スポーツジムなどのCO2濃度を可視化し、環境ナッジ行動を支援してきた。また調布市とも連携し、調布駅前の新型コロナワクチン接種会場で、三密状態回避の共同実証実験をすでに行っている。
これらの予備実験で得た小型センシング技術や可視化システムを活用し、8月1日から実施する同大体育館での大規模な集団接種で、会場内のCO2や温湿度などの各種IoTセンサによる三密・熱中症リスクのモニタリング、AI人流センサによる安全管理に関する実証実験を行っている。
実証実験で使用するシステムは、①二酸化炭素(CO2)濃度や温湿度・環境雑音など各種センサによる三密・熱中症リスクのモニタリング及び予測システム、②AI人流センサ(KDDI㈱との共同実証による)、③低消費電力型IoTコンピューティング環境(ソニー製SPRESENSETM及びIoT回線プラットフォームMEEQによる)。
これらは、横川慎二教授・澤田賢治准教授(ⅰ‐パワードエネルギー・システム研究センター)、安達宏一准教授(先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター)、榎木光治准教授(機械知能システム学専攻)、石垣陽特任准教授(情報学専攻)が共同で構築し、研究にあたるもの。
これらのセンサのうち、特にCO2センサは世界最高レベルの精度を持つ分析装置(ガスクロマトグラフィー)を用いて精度確保の検証も行われている。分析装置の精度は0.1ppmで1000万分の1という濃度を検出できます。例えるならば、東京都23区内の人口約1000万人弱から1名の人間を特定できる程の高精度。
人々の適切な行動変容に繋がることへ期待
新型コロナウイルスの変異種や第4波への対策が求められるなか、多人数が集まる場所では「換気の悪い密閉空間」を避けることが重要とされている。今回の取組を契機として、病院・高齢者施設・学校などでの安全安心を支えるため、IoTによる手軽な環境センシングとAI技術による分析・予測が広まり、人々の適切な行動変容(ナッジ)に繋がることが期待される。