日本全国には、城や神社、仏閣などの歴史上の価値の高い建造物や、町家、武家屋敷などの様々な建造物が残されている。さらに、そこで工芸品の製造や販売、祭礼行事など、歴史や伝統を受け継ぐ人々の生活が営まれることで、地域独自の風情や情緒、たたずまいを醸し出している。しかし、維持管理に多くの手間や費用がかかること、高齢化や人口減少による担い手不足などにより、こうした町並みや文化、生活、風景が失われつつある。
このような地域固有の歴史と伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境、いわゆる「歴史的風致」を維持・向上させ、後世に継承するため、平成20年に「歴史まちづくり法」が施行された。
「歴史まちづくり法」は、歴史的風致の維持・向上を図ろうとする市町村が策定する歴史的風致維持向上計画を、主務大臣である文部科学大臣、農林水産大臣、国土交通大臣が認定し、法律上の特例や各種事業により市町村の歴史まちづくりを支援するもの。
平成21年に石川県金沢市や岐阜県高山市など5都市が認定されてスタートした制度だが、今年10月3日に新潟県村上市、和歌山県広川町、静岡県三島市の歴史的風致維持向上計画が認定されたため、計画認定数は59市町村となった。
歴史的風致維持向上計画の認定は、取り組みの支援という面だけでなく、そこに住む人々にも、自分が住む町の歴史や魅力を知ることや、地域全体の将来を考えるきっかけになるという意味で大きな意味を持つ。また、認定により取り組みや魅力が取り上げられることで、地域外の人々へのPRにもなる。さらに、認定地域の取り組みを知った他地域の人が、自らが住む地域を見直す契機ともなる。
歴史的風致を維持・向上させる取り組みは、町の魅力の一つに着目した活動だが、その動きが周りの地域に波及し、さらには地域全体の活性化に繋がることも考えられる。地方、ひいては日本全体を盛り上げるためには、こうした自らの住む町や地域の魅力に気づくことが必要だ。