「バイオジェット燃料生産技術開発事業」として、木くずを原料とした燃料の生産技術開発に取り組む三菱パワー(株)、(株)JERA、東洋エンジニアリング(株)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と微細藻類を原料に燃料の生産技術開発を進める(株)IHIに委託していた国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、それぞれの技術から完成したバイオジェット燃料を持続可能な代替航空燃料=SAFとして航空機の定期便への供給を開始した。
この燃料は、固体の木質セルロースをガス化した後に液体燃料を合成するガス化FT合成技術と、微細藻類由来の油を精製する水素化精製技術により製造したもので、いずれもSAFの国際規格である「ASTMD7566」への適合を確認している。
NEDOは引き続き、これらSAFの大規模安定技術や製造コスト低減に向けた効率的な製造プロセスの確立を目指してSAF生産研究開発事業を実施していく。これにより2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、航空分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献していく方針だ。
世界の航空業界において、国際民間航空機構(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は、温室効果ガスの排出量削減による地球温暖化抑止対策を共通のテーマとして掲げている。そのうち、持続可能な代替航空燃料(SAF)の導入は有効な手段の一つとして位置付けられている。
こうした中、NEDOはSAFの商用化を視野に、原料となる木くずの調達および微細藻類の培養から純バイオジェット燃料まで一貫製造する体制の実証と、航空機への給油までを含めたサプライチェーンを具体化させることを目指し、2017年度からバイオジェット燃料生産技術開発事業を進めている。
その一環として、固体である木質セルロースをガス化した後に液体炭化水素燃料化するガス化FT合成技術による製法では、(株)JERAの施設内(愛知県名古屋市)に建設したパイロットプラントで原料に木くずを使用し、SAFを一貫製造する実証試験を行った。
ここでは(株)JERAが原料調達とパイロットプラントの運転、三菱パワー㈱が原料のガス化、東洋エンジニアリング㈱が生成ガスの液体炭化水素燃料化(FT合成)・蒸留と混合以後のサプライチェーン構築を担当し、JAXAが製造したSAFの燃焼における性能特性試験を実施。
木くずから製造された純バイオジェット燃料を既存の化石燃料(JET A-1)と混合したSAFは、今年3月に国際規格である「ASTM D7566 Anmex1」に適合することを確認した。
羽田空港発の定期便に供給
また、微細藻類由来の油を精製する水素化精製技術による製法では、(株)IHIが鹿児島県鹿児島市の既存施設とタイ・サラブリ県に新設したパイロット屋外培養施設を使い、大規模培養からSAF製造までの一貫製造技術の確立と以後のサプライチェーン構築に取り組んだ。微細藻類から製造された純バイオジェット燃料をJET A-1と混合したSAFも、今年4月に国際規格に適合することを確認。これらNEDO事業の成果を踏まえ、両技術によるSAFを羽田空港出発の定期便に供給を開始した。
NEDOは今後想定されるSAFの本格普及に向け、大規模安定製造技術や製造コスト低減に向けた効率的な製造プロセスの確立を目指して、SAF生産研究開発事業に取り組んでいく。これにより、航空分野での温室効果ガス排出量のさらなる削減と、2050年カーボンニュートラルを目指す。