久保田琉球大学理学部教授の研究チームと㈱シンクネイチャーは、生物多様性ビッグデータを基にして、日本の生き物の分布を可視化した『J‐BMP(日本の生物多様性地図化プロジェクト)』を、昨年公開した。このほど、一般財団法人高度技術社会推進協会(略称TEPIA、所在地:東京都港区)のTEPIA先端技術館の「バーチャル・ミュージアム」で、J‐BMPが公開展示されることとなった。J‐BMPは、3D空間上で表現した【デジタルTEPIA】(https://digital-tepia.com/)からアクセスできる。
久保田教授らの研究チームは、自然史(ナチュラルヒストリー)研究の成果を網羅的に集約して、生物多様性情報をビッグデータ化し、日本の全土の生き物の分布を「見える化」しました。さらに、研究チームは株式会社シンクネイチャーを立ち上げて、「日本の生物多様性地図化プロジェクト(J-BMP)」(https://biodiversity-map.thinknature-japan.com)を昨年度構築しました。
SGDS事業を支援
J‐BMPの生物多様性ビッグデータには、生物の空間情報、種の進化履歴を表す分子系統情報、種の生理生態学的な特徴を表す機能特性情報、生態系サービスに関係する生物の有用性情報などが含まれる。このビッグデータを分析することで、生物分布や種数の空間分布などを高精度で予測でき、私たちの身の回りに、どのような生物がどれくらい分布しているのか、全国各地の国立公園にどのような生物が分布しているのか、絶滅危惧種や外来種が、どこにどれくらい分布しているのかを、瞬時に把握できる。
現在、人類の影響で、生物の大量絶滅が懸念されている。このような地球環境問題を解決する上で、生物多様性ビッグデータを元にした保全計画の立案は大いに重要。J‐BMPのデータは随時アップデートされ、行政機関や民間企業などのSDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」や目標14「海の豊かさを守ろう」に関わる事業を支援している。
「生物多様性を高精度で観測する時代」到来
J‐BMPの生物多様性地図の空間解像度は1㎞スケール。現在、J‐BMPの空間解像度をメートルスケールに超高解像度化することを進めている。具体的には、生物多様性ビッグデータを人工衛星情報と統合。グランドトルース(実際の答え)である生物多様性ビッグデータを教師データにして、機械学習によるAIプログラミングで、人工衛星情報を植生タイプや生物種数情報に翻訳する試みとなっている。
久保田教授らは「これにより、人工衛星を運用した即時的な生物多様性モニタリングが可能になります。野外の生物観察を基盤としたフィールド科学と宇宙科学が融合され、地球上で育まれた生物多様性を、高精度で観測する時代が、今そこまで来ています」と意義を強調している。