農研機構、北海道情報大学、岐阜大学等の研究グループは、タマネギに含まれる「ケルセチン」が、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つことをヒト介入試験により確認した。
研究では、高齢の健康な人に、ケルセチンを多く含む、またはケルセチンを含まないタマネギ粉末を約5ヵ月間食べてもらい、一般的な認知機能検査を行った結果、ケルセチンを多く含むタマネギを食べた人の方が、摂取後に検査の点数が有意により大きく増加することが確認された。
研究グループは、今後、この成果を用い、ケルセチンを関与成分とする、タマネギの機能性表示食品の届出を目指すとしている。
食生活を介した認知症予防や加齢に伴う認知機能低下の改善への期待
日本では現在、総人口に占める65歳以上の割合が28%を超え増え続けており、このうち15%以上は認知症と推定されている。認知症は生活習慣病とも関わりが深く、要介護に至る主な原因であることから、食生活を介した認知症予防や加齢に伴う認知機能低下の改善に期待がもたれている。しかし、日常的に摂取する農産物について、認知機能を維持する作用が示された例はほとんどない。
そこで研究グループは、野菜や茶、果物等に広く含まれるフラボノイドの1種であり、タマネギに特に多く含まれるケルセチンが認知機能の維持に役立つ可能性について検討を行い、60~80歳の健康な人を対象とした介入試験により、タマネギに含まれるケルセチンの認知機能の維持に対する効果を調査した。
タマネギが認知機能に与える影響と抑うつ状態について調査
研究では、ケルセチンを多く含むタマネギ(ケルセチン高含有タマネギ、本試験では「さらさらゴールド」を使用)と、ケルセチンを含まないタマネギ(白タマネギ)の加熱粉末を、60~80歳の健康な人に24週間毎日摂取してもらい、認知機能に与える影響を調査。また、併せて認知機能低下と関連することが知られている抑うつ状態についても調べた。
具体的には、60~80歳の認知症ではない健康な男女70人に、タマネギ粉末を1日1回11g(タマネギとして約120g(中玉の1/2個程度)、ケルセチンとして50mg)を24週間毎日摂取させた。ケルセチンは熱に安定であることから、その際、調理等を含めて摂取方法は特に制限されなかった。
試験計画は、北海道情報大学の倫理委員会で承認され、また試験は信頼性の高いプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験で実施された。
その結果、認知機能については、ケルセチン高含有タマネギを食べた人は、一般的な認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数が、ケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取24週間後により大きく増加し、タマネギのケルセチンが認知機能の維持に役立つことが示された。
また、抑うつ状態については、ケルセチン高含有タマネギを食べた人は、iPadを用いた脳機能評価CADi2の点数が、ケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取24週間後により大きく低下し、タマネギのケルセチンが前向きな気分の維持にも役立つことが示された。