2040年の高齢者人口は約4000万人に達する見込みとされ、わが国は世界に類を見ない超高齢社会を迎える。労働人口の急減、被介護者の増加、社会保障費の増大など、さまざまな社会課題の深刻化により、このままでは日本の社会が立ち行かなくなることが予想される。
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)では、こうした状況を見据え、個人および国家の〝独立自尊〟を守り、健全な社会を形成していくための取組として、『2040独立自尊プロジェクト』を立ち上げた。
独立自尊とは、自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うことを意味する慶應義塾の基本精神。同プロジェクトは、理工、医学、人文社会科学という異なる研究領域が融合し、学生を含むアカデミア、企業、行政や海外機関との対話を通じ、より多層的な空間においてこの国家的困難の解決を目指す。さらには、新しい国家のあり方を提示し、日本が国際社会をリードすることで真の独立を追求する。
健康寿命延伸など3プロジェクト
同プロジェクトが目指すものは、▽すべての人が個人の尊厳を持ち、健康に生きるための社会の仕組み作りと、▽人間と機械の融合・調和を実現する新しいテクノロジーの創発。さらに、▽プラットフォームが巨大化するネットワーク空間で、個人と国家の尊厳を守ることができるような新たな秩序を提案する。
こうした方向性を踏まえて、①健康寿命延伸プロジェクト、②革新的ソフトマター統合プロジェクト(RIS∑(ライズ)プロジェクト)、③プラットフォーム「2040年」プロジェクト―の3事業が〝独立自尊〟の精神を軸に、相互に連携し課題解決方法を探る。
このうち健康寿命延伸プロジェクトでは、これまで社会参画が難しかった高齢者、家庭内介護者らが無理なく健康的に働くことができ、国が国際的な競争力も保つことができるような社会システム形成を目指す。健康の観点から、さまざまな技術活用と制度提案を含めたシステム設計と実証実験を進める。
ライズプロジェクトでは、たんぱく質や柔らかい物質として知られる「ソフトマター」という新技術を駆使して、人間と機械の調和・融合を実現するテクノロジーを発明し、持続可能な長寿社会を支える基盤技術を創出。今後、世界が直面する超高齢社会を克服する新しい社会を切り拓く。
「2040年問題」プロジェクトは、2040年問題への対策として急成長を遂げているSNSやネットメディア等のプラットフォームに対して、光と影両面の評価が行われていることを踏まえたもの。民主主義や自由、社会環境、対外的独立を維持促進するために、プラットフォームに対し、どのような法的倫理的規律をどのように構築するのかといったテーマについて、海外やプラットフォーム企業の視点を取り入れつつ検証する。