東京・八王子に拠点を置く東京薬科大学が高尾ビール㈱と共同で製作したクラフトビールが、この6月1日から販売されている。ビールの酵母は東京薬大で採取された『東薬花の酵母』を100%使用。同大では、『東薬花の酵母』を用いたビールづくりを通じて、地元・八王子地域の活性化に貢献することとしている。
東京薬大生命科学部食品科学研究室は、2016年秋から卒業研究の一環として、キャンパス内に生息している植物や果実延べ747種から、出芽酵母菌の少なくとも16系統を単離・分類し、『東薬花の酵母』と名付け、特性の評価を行ってきた。
また、同大イノベーション推進センターでは、URAが中心となり、研究成果の地域への還元をとして、それらの酵母を用いた発酵食品の開発を目指してきた。
高尾ビール㈱は、〝WE HIKE LOCAL,WE DRINK LOCAL〟を掲げ、地元農家や農場とのコラボレーションを重ねており、高尾に根差したビールづくりを進めてきた。
今回、八王子市でのマッチングの結果、地域活性化を共に掲げる高尾ビール㈱と東京薬大が『東薬花の酵母』を用いたクラフトビールを共同開発することとなった。
高尾ビール(株)と東京薬科大学では、2019年9月より、「東薬花の酵母」を用い、ビールへの適応性の評価を開始し、予備試験の結果を踏まえ、2020年1月から、八王子市の「市の花」であるヤマユリの酵母を用いた試作品「YMY#2」の醸造を開始した。2020年4月には、ノハラアザミの酵母と市販のビール(エール)酵母を順次使用する「ハイブリッド方式」で醸造したプロトタイプ「AZM#1」を完成させ、試験的に販売いたしました。
さらに、研究開発を進め、昨年9月には、コラボレーションの第一弾として、ヤマユリの酵母とビール(セゾン)酵母のハイブリッド方式で醸造した、クラフトビール『やまゆり』の販売を開始。このビールは、東京薬大のオリジナルラベルを貼付した限定350本が八王子市内の酒販店で販売され、すぐに完売になるほどの人気になった。
そして、今回、コラボレーションの第二弾としてヤマモモの酵母を100%用いたクラフトビール『やまもも』をリリースすることになった。ヤマモモは、ブナ目ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹で、毎年6月頃に暗赤色の果実を付ける。またその花言葉は、〝教訓〟〝一途〟など、大学発のクラフトビールにふさわしいイメージを持つ。
『やまもも』は、ヤマモモの酵母が生成する華やかな香りとほのかなスパイシー感が特徴のビール。梅雨の時期の高い湿度からくる不快さを、一瞬で吹き飛ばすような爽やかさを感じさせる味わいとなっている。
さらに、東京薬大薬用植物園で栽培されたホップも原料の一部として使用している。『やまもも』のラベルのデザインは、第一弾『やまゆり』に引き続き、八王子市在住のイラストレーター福岡和政氏が担当した。それぞれの酵母を育んだ花や果実を、温かみのある線や色でスケッチしたもの。
2018年4月のビールの定義変更や、昨年10月のビールの税額引き下げ、さらには世界的なクラフトビールブームも追い風となり、国内のクラフトビール市場は近年右肩上がりで成長を続けている。
〝八王子〟というキーワードのもとで研究開発されている『東薬花の酵母』を使用したクラフトビールのシリーズは、東京薬大や高尾ビール㈱が拠点を置く八王子地域への研究成果の還元という当初の目的だけでなく、原料として使用する地域特産の農産物の生産者との新たな連携や、八王子市を訪問する観光客向けの土産品としての需要など、八王子地域全体の振興へ寄与することが大いに期待される。
ビールは、6月1日から順次、八王子市やその周辺地域の酒屋で、合計900本が販売される。