東京大学等の研究グループは、1㌾以下の極めて低い動作電圧で100兆回の書き換え回数を達成できる強誘電体メモリの開発に成功した。配線工程中での作製・低電圧でのデータ読み書き・高信頼性を備えた強誘電体メモリを実現。IT技術や人工知能計算に必要不可欠な要素である不揮発性メモリを高性能化し、コンピューティング技術のさらなる発展に貢献することが期待される。
強誘電体メモリの開発に成功したのは、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の田原建人大学院生、トープラサートポン・カシディット講師、竹中 充教授、高木信一教授。JST戦略的創造研究推進事業のもと、富士通セミコンダクターメモリソリューション㈱との共同研究により、極めて低い動作電圧かつ長寿命の強誘電体メモリの開発に成功した。
IT技術に欠かせないコンピュータの低消費電力化や人工知能計算の高効率化に向けて、情報を記憶する不揮発性メモリの一層の高度化が強く求められています。特に、動作電圧の低減、データ書き換え回数の向上、データ保持時間の増大、BEOLといわれる半導体製造の配線工程中での作製が可能―という要求を満たすメモリが望まれている。
この共同研究で、酸化ハフニウム系強誘電体材料を、4㌨㍍まで薄くしても十分な強誘電体特性が得られる技術を確立することで、0.7㌾~1.2㌾の低い電圧でデータの読み書きができるようになり、最先端の大規模集積回路と同等の電圧で動作できることを明らかにした。
この低動作電圧に加えて、
①酸化ハフニウムという半導体製造プロセスに容易に組み込める強誘電体材料を用いていること
②半導体大規模集積回路の配線工程で許される温度範囲で作製できること、反転分極量が実用化上十分に大きいこと
③データの書き換え回数を100兆回程度まで伸ばすことができること
④一度書き込んだデータを10年以上記憶できること
など、不揮発性メモリとして必要な性能が全て備わった、優れた強誘電体メモリセルの実現に初めて成功した。
この研究成果は、不揮発性メモリ技術の新たな展開をもたらし、集積回路への混載メモリなどに適用することにより、人工知能技術への応用など今後期待される次世代コンピューティングの技術革新を促進していくことが期待される。