順天堂大学安全衛生管理室の福田 洋特任教授らは、医療従事者を含む同大本郷・お茶の水キャンパスの職員を対象に、新型コロナウイルス感染症既往の指標となる新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)抗体検査を実施したところ、曝露リスクが高い医療従事者と曝露リスクが低い環境で勤務している職員の間で抗体陽性率に有意な差がないことを明らかした。
昨年7月から8月に医師、看護師、その他の医療従事者、事務職員、研究者ら4147人を対象に抗体検査を実施。その結果、全体の抗体陽性率は0.34%で、同時期に厚生労働省が実施した東京都、大阪府、宮城県の一般住民を対象とした抗体陽性率の調査結果とほぼ一致した。
新型コロナウイルス感染症診療チームの医師、看護師やPCR検査に従事する臨床検査技師は、全て抗体陰性だった。この結果は、わが国で適切なシステムの下で十分な感染防御対策を行っていれば新型コロナウイルス診療の最前線に従事する医療従事者の感染リスクは一般人と同等であることを示している。この研究結果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版で公開された。
感染対策上での重要指標
新型コロナウイルスワクチン接種が進むなかで、抗体検査の役割は、感染既往を調べることからウイルスに対する抗体を獲得できているかを調べることに移行することが考えられる。これは感染対策上非常に重要な指標であり、ワクチン接種前の状況を知る上でも今回の研究の成果が活用されるものとみられる。
研究グループでは、今後、①ワクチン接種後にどのくらいの期間で十分な抗体量が産生、維持されるか、②測定される抗体価と感染予防効果がどのように関連するか―など、感染予防に関する調査研究を進める考えだ。