コミュニケーション・対人関係の困難とともに、強いこだわり・限られた興味を持つという特徴がある発達障害「自閉スペクトラム症」。信州大学教授らが行った全国の診療データベースを用いた解析により、2009年度から2014年度に出生した子どもの自閉スペクトラム症累積発生率が、5歳で約2・75%であることが、明らかとなった。
この解析を行ったのは、信州大医学部子どものこころの発達医学教室・精神医学教室の篠山大赤准教授、本田秀夫教授ら研究グループ。全国の診療データベース(NDB)を用いて、わが国での自閉スペクトラム症診断の実態を調査した。
調査の結果、2009‐2014年度に出生した子どもの自閉スペクトラム症の累積発生率は5歳で約2.75%であることが判明した。さらに累積発生率は出生年度ごとに増加傾向を示し、地域差もみられることが報告された。
この累積発生率は、医療的診断に基づく自閉スペクトラム症の発生率としては世界的に見て高い数値であり、わが国での診断感度の高さを示唆している。
研究グループは、全国的に増加傾向にあることに関して、「ここ数年の自閉スペクトラム症の認知度の高まりが影響している」と指摘。一方で、発生率の地域差が大きいことについては、医療や支援へのアクセスの違いなどの要因も発生率に影響を与える可能性が考えられるとしている。
自閉症スペクトラム症の頻度の変化を正確に捉えることは、有効なサポート体制実現のためにも、自閉スペクトラム症の危険因子や病因を研究する上でも重要。篠山准教授らは、引き続き自閉スペクトラム症の動向を調査する方針だ。