「感謝したことを1日1回振り返り、記録することで、学習モチベーションが向上」。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と立命館大学は共同で、日常生活のなかに起こるさまざまな出来事や、その対象となる人々に感謝したことを記録することにより、学習モチベーションが向上することを、クラウドシステムを使って実験的に明らかにした。
この研究を行ったのは、NICT未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター(CiNet)のナワ ノルベルト エイジ主任研究員と立命館大グローバル教養学部の山岸典子教授。
人は〝感謝すること〟で「幸福感」が向上し、「ウェルビーイング」と呼ばれる身体的・精神的・社会的に良好な状況が向上することが、ポジティブ心理学の研究で広く支持されている。しかし、学習モチベーションの向上に〝感謝の感情〟が影響しているかどうかはわかっていなかった。
これまで良いことをしてくれた人に対して、「感謝の手紙」を書いて渡すことで、学習モチベーションが向上するかどうかを調べる実験が行われてきたが、学習モチベーションの向上は見られず、感謝の手紙を1回書くだけなので、感謝の感情の変化による影響が小さかったのではないかと議論になっていた。
そこで研究では感謝について考えるのではなく、2週間にわたって、毎日、感謝したことや感謝した人のことを書く『感謝日記』を利用する方法を用い、〝感謝の感情〟が大学生の学習モチベーションに与える影響を確かめる実験を行った。
研究チームでは、クラウドシステムを独自に開発し、日々感謝した事項を記録する「感謝日記」とともに、学習モチベーションを含む心理的変化を長期間にわたり計測することを実現。
その結果、2週間にわたって日々感謝することが、学習モチベーションの向上に影響を与えること、さらに、その効果が3ヵ月後まで維持されることを解明した。