第3回北極科学大臣会合が、5月9日・10日の両日、オンラインなどで開催された。米国やロシアなど北極圏8カ国をはじめ日本や英国、中国、ドイツ、フランスなど17ヵ国計25ヵ国、さらに北極圏に居住する先住民団体6団体の代表者が集い、「北極研究の推進」をテーマに議論。最後に共同宣言を取りまとめた。観測データの共有など国際連携を強化する。
会議には、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国の北極圏8ヵ国が参加。さらに、オーストリア、ベルギー、中国、チェコ共和国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、オランダ、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、スペイン、スイス、英国の17ヵ国のトータル25ヵ国を代表する大臣、さらに欧州連合(EU)の代表者が出席した。
また六つの北極圏に居住する先住民団体(アリュート国際協会、北極アサバスカ評議会、国際グイッチン国際評議会、イヌイット極域評議会、ロシア北方民族協会、サーミ評議会)の代表者が集まった。
「持続可能な北極圏の知識」と題した共同宣言では、①観測、②理解、③対応、④強化-という四つの視点で今後の方向性を提示。このうち観測は、『観測ネットワーク、データ共有 ―実装に向けて―』という方針を打ち出し、「北極観測とデータの共有に関する国際連携の強化」「知の共同制作を通じて、北極圏と全球の観測プログラム間の連携強化」などに取り組むことを確認した。
理解は『北極環境及び社会システムとその全球的影響の予測と科学的理解の強化』を目指すもの。⑴多項目の調査による学際的国際研究プロジェクトの推進、⑵知の共同制作を通じて、急速に変化する北極圏の科学的理解―に取り組む。
対応の方向性は『持続可能な開発、脆弱性と回復力の評価、科学的知識の適用』。持続可能な北極圏のための知識」の作成(科学的発見と伝統的/先住民/地元の経験を組み合わせるとともに、適応、緩和、回復策のための科学的知識に基づく意思決定の重要性を強調している。
強化は『人材育成、教育、ネットワーク形成―次世代を念頭において―』を観点に、共同宣言に盛り込んだ。▽北極研究コミュニティにおける人材強化、▽地域及び全球的な環境問題の双方に関わる研究コミュニティの拡大、▽高速ネットワーク(教育・コミュニケーションに欠かせないツール)など、必要なインフラへの投資―などを行う。