国立がん研究センターと国立成育医療研究センター、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部の研究グループは14日、3000g未満で生まれた日本人女性では妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高いという研究結果を公表した。研究成果は、13日付の疫学専門誌「Journal of Epidemiology」で発表された。
調査は、2011年から2016年にかけて実施。秋田県、岩手県、茨城県、長野県、高知県、愛媛県、長崎県に住む40歳から74歳のうち、妊娠を経験した女性約4万6000人を対象に、自身の出生体重と、妊娠期における妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病との関連を本人の同意のもとで調べた。出生体重や妊娠時の症状の有無などは、アンケートで収集。その際、地域や出生年、教育歴、疾患の家族歴といった要素は統計学的に調整し、可能な限り影響を除いた。
妊娠高血圧症候群のリスクについて、出生体重が3000g以上4000g未満の人に対し、2500g以上3000g未満の人は1.13倍、1500g以上2500g未満の人は1.16倍、1500g未満のグループは1.60倍の差があった。4000g以上の人でもリスクは1.41倍になっていたが、統計学的に有意な関連はみられなかった。
さらに、妊娠糖尿病についてみると、出生体重が3000g以上4000g未満の人に対し、1500g以上2500g未満の人が1.20倍となっていた。ただし、そのほかのグループに関連はみられなかった。
これまでの研究で、出生体重が少ない女性は、その成人期において高血圧、糖尿病や心疾患などのリスクが高いことが報告されている。欧米では、出生体重が少ない女性は、妊娠時にも妊娠糖尿病などを発症するリスクも高いことが判明していたが、日本人を対象にした研究はなく、日本人についての関連はわかっていなかった。
調査で示されたリスクの差のメカニズムは明確になっていない。ただし、低出生体重児は、血管の内皮機能が弱いことや腎機能が低下しやすいことが報告されており、このことが妊娠時に妊娠高血圧症候群のリスクと関連がみられた理由の一つと考えられている。
一方、欧米の先行研究では、出生体重が多い女性と妊娠高血圧症候群の関連があること報告されている。しかし、今回の研究では参加者に出生体重が4000g以上の巨大児だった女性が少なかったことが要因で、統計学的に有意な関連を見ることが出来なかった。