2021年3月31日 【研究開発】手術予定患者へのワクチン接種は優先すべき 年間約6万人のコロナ関連死予防

大阪府枚方市の関西医科大学など国際研究チームは、外科手術を予定している患者に優先的に新型コロナウイルス感染症ワクチンを接種することで、最大で年間5万8687人のコロナ関連死を防ぐ可能性が高いとの結論に達した。同大学外科学講座の里井壮平診療教授が、埼玉県立小児医療センター医師、ヴェイン州立大小児科医師らとの共同研究で明らかになった。研究チームでは、世界各国で頭を悩ませているワクチン接種の優先順位決定をサポートすることができると期待感を表明。さらに、予定手術の再開を進んで待機患者が減ることや、術後合併症を予防して集中治療の必要を低減できることから、医療費の削減にもつながる。この研究をまとめた論文が英国科学誌「British Journal of Surgery」(インパクトファクター:5.676)に3月24日付けで掲載された。

コロナ禍で2800万件のオペ延期・中止

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症については。パンデミックの第一波によって世界の最大70%の予定手術が延期され、2800万件のオペが延期、またはキャンセルされたと推定されている。その後、多くの国・地域で手術件数は回復し始めているが、今後、新型コロナのさらなるパンディックが発生した国・地域では、今年いっぱい継続的な混乱が続く可能性が指摘されている。

また、予定手術が延期されればその分、病状が進行することは避けられず、術後の回復推移・生命予後の悪化は明らか。安全で確実な予定手術の再開判断と手術件数の回復を図る必要性が高まっており、判断基準が求められていた。

研究に世界116ヵ国1667病院の外科医・麻酔科医約1万5000人が参加。14万1582名の診療、臨床情報を収集し、手術患者集団と一般集団の予後、健康状態を比べた。さらに、1年間に新型コロナ関連死を1回防ぐために必要なワクチン接種数を算出し、比較。分析の結果、新型コロナに感染した患者は術後30日以内に死亡するリスクが、そうでない患者と比較して4~8倍にも上がったという。特に70歳以上の患者やがん手術を受ける患者にはワクチンを優先的に接種することが、コロナ関連死を予防できる可能性が高いとの結論に至ったという。


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