アルツハイマー病、認知症の原因に
東京大学医学部附属病院医師らが、ウェブ上での簡単なテストで、アルツハイマー病の前駆状態に該当する可能性を予測するアルゴリズムを開発した。前駆状態に該当するかどうかということに関するスクリーニング効率を高めることができ、ひいては認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病の根本治療薬の開発促進に貢献することも期待される。
このテストを開発したのは、東大病院の佐藤謙一郎医師と、同大大学院医学系研究科の岩坪威教授。
探せ、異常たんぱく質「アミロイドβ」
認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病は、国内だけでも患者の数は2021年現在で600万人以上いるといわれ、根本的な治療法の開発が急務となっている。アルツハイマー病が起きるメカニズムには今なお未解明な点が残されているが、脳内にアミロイドβという異常たんぱく質が貯まっていくことが最初のきっかけとして考えられている。
無症状ながら、アミロイドβが蓄積している、いわば発症前の前駆状態に治療を開始することで、根本的な治療が可能ではないかと、ここ数年考えられるようになってきた。現在、この前駆期間の患者を対象として、アルツハイマー病の根本治療薬の開発を目指したいくつかの臨床試験が世界的に始められている。
一方で、60~70歳以上の人の約4、5人に一人程度は、この前駆期に該当すると見積もられるが、ほとんど認知機能の低下症状がないため、臨床試験対象者を見つけ出すことが大きな課題となっていた。また、脳内アミロイドβの蓄積を判定するためには専門の脳PETを行うことが求められるが、一部の専門施設でしか可能でなく、また、保険適応もなく、極めて高価な検査であることの理由などから、臨床試験が十分に進んでいないのが現状。
佐藤医師らは、この前駆期該当者を、インターネット上で年齢・性別などのほかに簡単な認知機能検査などで予測するアルゴリズムを作成し、活用を開始した、。この簡単な認知機能検査をスクリーニングとして活用できるため、約5人にPET検査を行って、うち一人の前駆期の人を初めて見出せるところを、より少ない人数のPET検査で済むという、資源効率的・費用経済的な効果が得られると期待される。