東京大学医科学研究所などの研究グループは22日、東京オリンピックの開会式における新型コロナウイルスの感染リスクのシミュレーション結果などを公表した。主催者や観客が対策を講じることで、対策がない場合に比べて感染リスクを99%低減できるとしている。研究の成果は、微生物のリスク分析に関する国際的な専門誌「Microbial Risk Analysis」の21日付に掲載された。
シミュレーションでは、会場に6万人の観客が5時間滞在すると仮定。感染者が行う咳や会話、くしゃみに伴って放出されるウイルスの量を計算した。そのうえで、飛沫が直接かかったり、直接吸い込んだりした場合や、空気中に漂ったり、感染者が接触したところに付着したウイルスを周囲の人が口などから取り入れてしまう可能性を算出している。
結果によると、対策を何も講じない場合、会場の感染者1人あたりで1.5人から1.7人を新たに感染させると推定。一方、主催者と観客が協力して対策に取り組むことにより、感染者1人あたりで感染させる人が0.009人から0.012人に抑えられ、リスクを99%低減できるとした。考慮した対策は、① 入退場時の物理的距離、② 環境表面の除染、③ スタジアム内の空気の換気、④ 観客席のパーティショニング、⑤ マスク、⑥ 手洗い、⑦ 髪の防護の7つ‐。このうち①から④は主催者側、⑤から⑦は観客側が実施するものとして分けた。
研究グループは今後、人の移動や集中による感染リスクなども含めた、スタジアム外での観客の感染リスクの評価と対策の評価、選手やスタッフのリスク評価と管理方法についても取り組むことで、効果的な対策の提案を目指す見込みだ。さらに、オリンピック以外の様々な人が集まるイベントを対象にしたリスク評価も進めるとともに、実際に行われたイベントにおいて換気や人の動態などの調査を行い、効果的な具体的対策を提案していくという。