農林水産省は、「令和2年度 食料・農林水産業・農山漁村に関する意識・意向調査」でとりまとめた「農業経営の継承に関する意識・意向調査結果」を公表した。それによると、回答を得られた690人のうち、現在の経営を継承する意向について約50%が「経営資産の全体または一部を継承する」と回答しており、そのうちの約8割では後継者が決まっていると答えている。
経営の次世代への円滑な継承が課題
農業者の高齢化が進む中、将来にわたり地域農業を担う農業者においても、経営を次世代に円滑に継承していくことは喫緊の課題となっている。
昨年3月にとりまとめられた「食料・農業・農村基本計画」でも、「次世代の担い手への円滑な経営継承」として、支援体制の整備、計画的な継承の支援、第三者継承の促進等をパッケージ化した支援を行うこととされている。
今回の調査は、こうした状況を受け、認定農業者がいる経営体を対象に農業経営の継承に関する意識・意向を把握し、円滑な経営継承に向けた支援策の検討のための基礎資料を整備することを目的に実施された。
調査の対象となったのは、2015年農林業センサスの対象となっている農業経営体(家族経営体)の世帯主であって、▽認定農業者のいる農業経営体の経営主であること ▽令和2年4月1日時点で60~69歳であること ▽農産物販売金額があること ― といった条件を満たす者。具体的には、1000人を対象に、昨年8月上旬から下旬までの期間で経営継承の意向、経営継承の取組状況、経営継承を進める上での課題等が調べられたが、有効回答数は690人、有効回答率は69.0%だった。
― 調査結果のポイント ―
現在の経営を継承する(他者に引き継ぐ)意向を持っているかを尋ねる問に対しては、「はい(経営資産の全体または一部を継承する)」と回答した割合が50.1%で最も高かった。次いで「決めていない」が34.6%、「いいえ(何も継承しない)」が7.8%で続いている。
また、経営資産の全体または一部を継承する意向を持っている人で、「後継者が決まっている(本人の同意を得ている)」と回答した割合は40.1%(経営資産の全体または一部を継承すると回答した者の80.1%)、「後継者は決まっていない」と回答した割合は9.9%(同19.7%)となった。
また、「後継者が決まっている(本人の同意を得ている)」と回答した277人に、後継者の属性を聞いたところ、「子(同居)」が72.9%、「子(非同居)」が23.5%で、ほとんどが自分の子供に継承すると答えた中、「子以外の親族」、「新規就農者または新規就農予定者」、「地域内の農業者、農業法人」との回答もあった。
次に、経営資産の全体または一部を継承する意向がある人に、後継者に継承したい資産について聞いたところ、「農地」と回答した割合が94.8%と最も高かった。次いで「施設・機械等の有形資産」が86.4%、「生産技術・ノウハウ」が61.0%で続いている。
後継者が決まっている人の経営継承の取組状況についてみると、「経営継承計画等があり、既に経営継承の取組を進めている」と回答した割合が30.7%と最も高い。次いで「経営継承計画等は策定していないが、既に経営継承の取組を進めている」が23.5%、「具体的に取り組んでいない(取り組むべき内容はわかっている)」が23.5%で続いている。
また、後継者が決まっている人に、経営継承を進める上での課題について尋ねた結果、「後継者の育成(経営管理面)」と回答した割合が43.7%と最も高かった。次いで「後継者にいつ、どのように継承を進めるかの計画(経営継承計画)の策定」が42.2%、「後継者の育成(技術面)」が41.2%で続く。
現在の経営を何も継承しない(他者に引き継がない)意向の人について、その理由を聞いたところ、「地域に農地の受け手となりうる農業者がいないため」と回答した割合が29.6%と最も高かった。次いで「地域に農地の受け手となりうる農業者はいるが、これ以上農地を引き受けきれない状態のため」が24.1%で続いている。