順天堂大学医学部附属病院助教らは、心肺停止患者のAI(人工知能)による高精度予後予測モデルを開発した。医療機関の外で心臓が停止する院外心肺停止患者のデータベースに、AIの機械学習手法を用いることで、電気ショック適応の院外心肺停止患者の予後を高精度で予測するもの。心肺停止患者の生命予後に関しては、蘇生過程の多様な要因が関与することから、早期に予測することは困難とされていたが、今回開発したAI手法を用いることにより、精度の高い予後予測を可能にした。救急現場のAIによる最適な蘇生治療選択のサポートを可能とし、社会復帰可能な状態での蘇生患者の増加につなげることが期待される。
モデル開発を行ったのは、同大浦安病院の平野洋平助教ら。消防庁による全国規模の院外心肺停止症例のデータベース5年分を使用してAIで予測。さらに、病院搬送までの時間や強心剤の投与回数など19の情報も用いて検証し、高い精度の予測に成功した。
院外心肺停止事例、年間12万件
医療機関の外で心臓が停止する院外心肺停止事例は、国内で年間約12万件発生している。心肺停止患者の蘇生には、周りに居合わせた人々の迅速な救命処置が重要で、救命・社会復帰できる可能性が、何もせずに救急車を待った場合と比べて大きく向上する。
搬送された医療機関では、患者を蘇生するための心肺蘇生治療が行われるが、心臓マッサージをはじめとして、ときには高額な人工心臓装置や体温管理装置など多くの医療資源や人的資源が投入される。
しかしながら、このような医療資源を投入しても、死を免れない症例や、たとえ生存したとしても脳に重篤な障害を残し、社会復帰が不可能な状態となってしますケースも数多くある。心肺停止症例の予後に関しては、蘇生過程の多様な要因が関与することから、予測は非常に複雑で難しく、1分1秒を争う救急現場で、高額で限られた医療資源をどの症例に用いるべきか、蘇生治療の選択を的確かつ迅速に行うことが求められている。