革新的な技術の原石を発掘し、将来の国家プロジェクトへの道筋をつけることを目指して、先導研究プログラムに取り組んでいる国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、マテリアル分野に特化した新たなプログラムを創設する。
新設するプログラムは「マテリアル革新技術先導研究プログラム」。実施期間を従来のプログラムより長い最大3年とし、革新的なマテリアル技術シーズの発掘・育成を行い、データを活用した製造プロセスの高度化や資源的な制約を抱える原料のサプライチェーン強靱化、新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策など、マテリアル・イノベーションを加速する研究開発を後押しする。
これらの取り組みを通じて、日本の輸出産業の主要な柱となっているマテリアル関連産業の国際競争力を強化。日本発のマテリアルで新しい価値や産業の創出に貢献する。
日本にとって、マテリアルは自動車と並ぶ輸出産業の要。世界市場の過半シェアを占める製品も多数存在する。一方で、諸外国との競争激化、データを活用した研究開発の世界的進展などにより、一部の製品で国際市場シェアを落とす傾向にある。
また、試作品から量産化へとスケールアップさせるプロセス技術の開発に長い時間と多額の投資を必要とするなど、特有の課題を抱えている。
こうした背景を踏まえ、昨年6月2日に文部科学省と経済産業省が合同で「マテリアル革新力強化のための政府戦略に向けて(戦略準備会合取りまとめ)」を決定。また7月17日に閣議決定された「統合イノベーション戦略2020」において、国を挙げて取り組みを推進すべき重要な基盤技術のひとつとして新たにマテリアルが取り上げられるなど、現在、さまざまな政府戦略が検討されている。
最大3年、1件1億円
NEDOが創設する「マテリアル革新技術先導研究プログラム」は、これら政府方針に基づき、マテリアル分野の国際競争力強化を目指し、先導研究プログラムとして、「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」、「新産業創出新技術先導研究プログラム」に次いで新たに取り組む。
新産業の創出に向けた有望なマテリアル分野を対象に、事業開始後15年から20年以上先の社会実装を見据えた革新的な技術開発を目指すもので、2月上旬を目途に2021年度公募を開始する。
具体的には、以下4つの研究開発課題を設定する(実施期間:最大3年、予算:1件あたり年間1億円以内)。
〇 データを活用した革新的マテリアル製造プロセスインフォマティクス技術の開発
〇 超高品質・超高信頼性・超耐久性を有するスーパーファインセラミックスを実現する基盤技術の開発
〇 資源産出国への実質的転換を実現する革新的マテリアルプロセス技術の開発
〇 ウイルス感染症対策の社会実装を加速する新規マテリアル関連技術の開発