教育格差を解消するためには、高等教育の無償化などが必要―。日本財団が17歳から19歳までを対象に行った調査(18歳調査)で、こうした若者の意識が明らかとなった。ハイティーンの約半数が教育格差を感じており、国の教育予算に関しては、6割以上が少ないと感じているという。また、約3割が昨年来のコロナ禍が進路への影響を与えたと答えている。
調査は①学習環境、②コロナ禍の影響、③教育格差―の3項目で若者の意識を浮き彫りにした。このうち学習環境の調査では、他人に比べて学習環境に差があると感じているのは43.4%となった。理由としては「集中して勉強できる環境が家庭になかった」が最も多く32.0%で、以下、「経済的な理由で塾や習い事に行けなかった」(22.6%)、「身近に勉強を教えてくれる人がいなかった」(21.9%)が続く。また、コロナ禍に伴い遠隔授業などが行われているが、「家庭や学校のデジタル環境整備に格差がある」と回答したのは12.0%、「学校でのオンライン授業が未導入」が15.0%となった。
自身の進路について相談できる人については、親が最多で83.4%で、友人・先輩は55.3%、学校教諭は52.7%。一方で、約2割が相談できる人がいないと回答。身近に相談相手がいないことや、何を相談していいかわからない、相談することにためらいがあることなどを、相談できる人がいない理由としてあげている。
□コロナ禍で受験先変更
コロナ禍の影響では、学習環境の差が広がったかどうか聞いた。「広がった」と感じる人は52.9%、感じない人は47.1%と回答は二分しており、以前から学習環境の差を感じているとした層は、7割近くがコロナ禍でさらに差が広がったと回答した。
また、コロナ禍は自身の進路に影響があると答えたのは31.5%となった。具体的な影響としては「就職希望業種の範囲を広げた」が最多の33.3%で、以下、「思ったように成績が伸びず入試方法を変更した」(19.7%)、「進学先の地域を考え直した」(18.7%)が上位を占めた。さらに、「経済的な事情から受験先などを変更した」「部活の試合が開催されず、進学に必要な成績が残せなかった」といった声も聞かれた。
コロナ禍が与えた学習意欲への影響に関しては、「変わらない」が60.9%で最多となり、「上がった」は9.3%、「下がった」は29.8%となった。
□教育格差、「今後広がる」51%
教育格差に関しては、「感じる」「感じない」がそれぞれ半数ずつと意見が分かれた。教育格差を感じている人に、格差を実感するケースを聞いたところ、「家庭の収入面で塾に通える、通えないなどの格差」「親の経済状況により進級を断念しないといけない友達を見たとき」など、自身もしくは身近な人が家庭の経済状況により進学・進級を諦めたり、塾に通えないという状況に教育格差を感じるという声が多く挙がった。経済状態の差が教育格差を生む大きな要因であることが明らかとなった。
また、今後、教育格差は広がるかという問いに対しては、51.2%が「思う」と答えた。9.3%の「思わない」を大きく上回る結果で、39.5%は「わからない」と回答した。格差が広がると思う理由としては、「家庭の経済格差が教育にも反映される」が34.2%と最多。このほか「国や自治体の教育予算が伸び悩んでいる」(17.6%)ことを理由として選ぶ若者も多数みられた。
一方で、54.6%の若者が教育格差を是正する必要があるとしており、9.8%の「必要ない」を大きく上回った。格差を是正するうえで必要な取組としては「高等教育の無償化などの制度整備」が48.8%で最多。次いで、「無償の学習支援拠点の整備強化」(33.8%)、「オンライン教育の強化」(同)が続いた。教育に関わる国の予算に関しては、「少ない」が62.4%で過半数を占めた。「妥当」は33.7%、「多い」は3.9%だった。