文部科学省が取りまとめた2019年度公立学校教職員の人事行政状況調査によると、1)精神疾患による病気休職者5478人で前年度521人から増加、2)体罰により懲戒処分を受けた教師は550人で、前年度578人から減少、3)わいせつ行為により懲戒処分を受けた教師は273人(前年度282人)で、うち児童生徒に対するわいせつ行為により懲戒処分を受けた教師は126人にのぼることが判明した。
このほか、校長、副校長及び教頭といった女性の管理職は、全体の19.7%にあたる1万3501人で、前年度1万2808人(18.6%)からさらに増加した。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントの防止措置に関する指針は全都道府県・指定都市で策定済であることが分かった。
この調査は、教職員の人事管理に資するため、公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校における教職員の人事行政の状況について調査を実施しているもので、調査対象は47都道府県及び20指定都市の計67教育委員会。
病気休職者
教職員の精神疾患による病気休職者は、5478人(全教育職員の0.59%)で、2018年度(5212人)から増加し、人数は過去最多(在職者に占める割合は平成21年度に次いで過去2番目)だった。
懲戒処分等
懲戒処分等を受けた教育職員は、4677人(0.51%)で、2018年度5978人(0.65%)から1301人減少した。このうち、体罰により懲戒処分を受けた教師は550人で、2018年度の578人から減少。一方、わいせつ行為等により懲戒処分を受けた教師は273人で、過去2番目の多さだった。うち、児童生徒に対するわいせつ行為により懲戒処分を受けた教師は126人で、121人が免職となっている。
女性管理職
校長、副校長及び教頭といった管理職にある女性教師は1万3501人で、2019年4月1日現在と比較すると693人の増加となっている。女性管理職割合の19.7%は過去最高。今後さらに伸びることが期待されている。
ハラスメント防止措置
パワハラ、セクハラの防止措置について、「要綱・指針等の策定」「相談窓口の設置」「研修の実施」は全都道府県・指定都市で実施済。ところが、「厳正に対処する旨の方針等の規定、職員への周知・啓発」に関しては、パワハラ(85.1%)や妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(70.1%)において、一部措置が進んでいない都道府県・指定都市がみられる。
調査結果を踏まえた文科省の今後の対応は、
■精神疾患による病気休職者の人数が過去最多となったことについて、原因として考えられる業務量の増加や複雑化、職場の人間関係に加え、2020年度以降には、新型コロナウイルス感染症対応の職務により、精神的な緊張や心身の過度な負担につながることも懸念されることを踏まえ、適正な勤務時間管理の徹底や働き方改革の総合的な推進、相談窓口の整備促進などの対応を行う。
■わいせつ行為により懲戒処分を受けた教師が依然として多いことについては、「極めて深刻に受け止めている」として、懲戒免職とすることや告発を遺漏なく行うことを徹底、今年2月中に「官報情報検索ツールの検索可能期間の直近40年間への延長と活用の促進、研修会での取組事例の共有などを進める。
■体罰については、減少しているものの、学校現場において今なお体罰が発生していることも事実であるため、引き続き、体罰根絶に向けて各教育委員会に対する指導を行う。
■女性の管理職の割合については、第4次男女共同参画基本計画の成果目標である20%に達しなかったものの、近年上昇し続け、過去最高となった。引き続き女性教員の育成やハラスメントの防止、各教育委員会における取組を促進する。