国立がん研究センターは31日、受動喫煙が肺がんリスクを約1.3倍に高めるという調査結果を発表した。これまで、受動喫煙が日本人の肺がんを引き起こすリスク評価については、「ほぼ確実」とされていたものを、エビデンスをもとに「確実」へと引き上げている。
がんセンターは、タバコを吸わない日本人を対象に、受動喫煙と肺がんの関係性を探った426本の研究論文のうち、喫煙者を夫に持つ妻に行った調査など一定の基準を満たした9本を選定。「メタアナリシス」という方法を使って、複数のデータを収集・統合したうえで解析を行った。その結果、受動喫煙がある人は、ない人に比べて肺がんのリスクが1.28倍高いことがわかった。
今回の結果を踏まえて、同センターは喫煙や飲酒、食事など6項目でがんの予防法を示している「日本人のためのがん予防法」でも、他人のタバコの煙に関する記述について、「できるだけ避ける」から「避ける」に修正。受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標に切り替えた。
受動喫煙を防止する対策として国際的に有効だと考えられている屋内での全面禁煙については、2014年時点でアメリカやロシア、スペインなどを中心に49ヵ国が実施済み。最近のオリンピック開催国では、イギリスやロシア、ブラジルなどで罰則付きの取り組みが施行されている。
喫煙と肺がんのリスクについては、多くの調査、研究が高い関連性を指摘。日本では肺がんの死亡のうち、男性の70%、女性の20%は喫煙が原因と考えられている。また、肺がん以外のがんとの関連も明らかで、がんの死亡のうち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられているのが実情だ。受動喫煙と肺がんのリスクに関しては、1981年に当時の平山雄国立がんセンター研究所疫学部長が世界で初めて報告し、その後研究が蓄積され2004年に国際がん研究機関(IARC)が、環境のたばこ煙の発がん性を認めるに至っている。
公共の場所のすべてを法律で屋内全面禁煙にしている国(2014年時点)
(注1)アメリカは州ごとに全面禁煙の場所が職場やレストランなどに分かれている
(注2)イタリア・フランス・フィンランドは厳しい喫煙室の設置基準を設定することで実質的な全面禁煙を行っている
(注3)香港では2007年から2009年にかけて段階的に屋内の全面禁煙が行われた