2020年12月10日 在宅介護ロボ、「使いたい」は日本が最多 アイルランド、フィンランドとの3ヵ国調査で明らかに

千葉大学教授ら国際共同研究グループが、日本、アイルランド、フィンランドの高齢者・家族介護者、在学ケア専門職を対象に行った在宅介護ロボットに関する大規模アンケートによると、介護ロボットを「使用したい」との回答者の割合は、わが国が最も高いことが明らかとなった。全体の約7割で、最も低かったフィンランドとの差は約20%にものぼる。わが国ではロボットに関する報道を目にすることが多く、研究グループでは、「ロボットに対する親しみの感情を持てるような機会を作ることが、今後在宅介護ロボットを開発し、広く実践するために大切」としている。

超高齢社会のわが国では、介護者の不足に備え、在宅介護ロボットの開発と社会実装が喫緊の課題とされている。一方、高齢化が進展しつつある諸外国も、わが国の介護ロボットの取り組みに大きな関心を寄せている。

わが国では、すでにさまざまな介護ロボットが開発されており、介護ストレスの緩和や安全安心の獲得などベネフィット(利益)は大きいといわれている。しかし、高齢者とロボットの接触による転倒・骨折、プライバシーの侵害、行動制止といったリスクもあることから、倫理的課題は大きく、社会実装や普及は十分に進んでいない。

さらに、在宅介護ロボットの開発では、ユーザーとなる高齢者が研究開発に参加し、効果を検討することが必要だが、認知症などによって意思決定能力が低下した人々の参画も求められることから、より丁寧な倫理的配慮が求められるという。

 

自分以外のロボ使用判断者は「家族

この調査を行ったのは、千葉大大学院看護学研究科の諏訪さゆり教授、フロンティア医工学センターの兪文偉教授ら国際共同研究グループ。3ヵ国の高齢者らを対象に、在宅介護ロボットの研究開発と社会実装に関する倫理的課題をどのように認識しているか聞いた。

調査によると、わが国はロボットに関するニュースを「見聞きしたことがある」「関心がある」いった者の割合が多い。こうした社会的背景なども一因となったとみられ、家族あるいは自身の介護のために在学介護ロボットを使用したい者の割合が、3ヵ国で最多となった。家族の介護は日本70.1%、アイルランド66.9%、フィンランド52.7%、自身の介護は日本71.8%、アイルランド69.3%、フィンランド52.9%。

また、介護ロボット使用の可否を決めるのは、自身が最も多く続いて家族、医師・介護専門職の順。自身で判断できなくなったケースでは、日本93.7%、アイルランド76.4%、フィンランド83.1%が「家族に決めてもらってもよい」と回答した。

 

日本以外は「交流を大切にする権利」重視

介護ロボットの使用を検討する際に重要視する点でも、3ヵ国、特にわが国と他2ヵ国との間で差異がみられた。わが国は安全性、正確性、耐久性がトップ3を占め、回答率はいずれもほぼ100%にのぼった。アイルランドとフィンランドのトップは「在宅介護ロボットの使用に関わらず人間同士の交流を大切にする介護を受けられる権利の保障」で、ほぼ9割が回答。「心の豊かさの向上・癒し効果」への期待(アイルランド2位)や、法的規制の整備(アイルランド・フィンランド3位)も重視している。

研究グループでは、在宅介護ロボットの研究開発と社会実装に関する意思決定やプライバシーについても調査した。ロボットが取得する情報に関して、「本人が許可すれば、利用者を特定できる写真や動画を撮ってもよい」と回答したのは、わが国が55%で最も高く、他2ヵ国と10%近くの差異があった。さらに、「ロボットの研究・開発に参加することで他の人や社会の役に立ちたい」と回答した者の割合はアイルランドが81.8%で最多。一方で、「自分にメリットがあるなら研究・開発中でも使いたい」との回答は3ヵ国中最下位となった。アイルランドのこうした調査結果を踏まえて研究グループでは、介護へのボランタリズム(公共・福祉のためにする個人の自発的な協力)を育むことで、在宅介護ロボットの研究・開発に参加する意識が高まることが示されたとしている。


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