消費者庁は19日、11月26日の「いい風呂(1126)の日」を前に、高齢者に向けて浴槽内での事故に気を付けるよう注意を呼び掛けた。冬場は部屋の冷え込みや温度差で事故が生じやすいと指摘。入浴前に脱衣所や浴室を温めるなど、対策を取るよう求めている。
厚生労働省の人口動態調査によると、昨年1年間に浴槽内で亡くなった65歳以上の高齢者は4900人だった。人数は、同年に交通事故で亡くなった高齢者(2508人)の約2倍に上る。
事故は11月から年明けの4月にかけて増加する傾向にある。実際、昨年は全体の78.5%がこの時期に集中。中でも1月の937件、12月の737件、2月の624件が目立っている。
亡くなった人を年代ごとに人口10万人当たりでみると、数値は年代が上がるにつれて上昇。特に75歳以上の後期高齢者では、死亡者の増加が顕著に表れた。さらに、男女別では、どの年代においても男性が女性を上回る結果になった。男性は年齢の上昇と死亡者の増加がリンクしているのに対し、女性は年齢が上がるごとに死亡者との差が広がる傾向にあった。
消費者庁は高齢者に対し、「事故は持病がない場合や前兆がない場合でも起こるおそれがある。『自分は元気だから大丈夫』と過信せず、『自分にも、もしかしたら起きるかもしれない』と意識することが大切だ」と指摘。本人に加え、周囲の家族らが気を付けることも大切だと訴えた。
高齢者は血圧を正常に保つ機能が低下するため、寒暖差などで急激な血圧の変動があると、脳内の血流量が減って意識を失うことがあり、これが入浴中に起こると溺水事故につながると考えられている。
脱衣所や浴室を温めるのに加えて、お湯は41℃以下に、つかる時間は10分程度を目安にするよう求めた。浴槽から急に立ち上がらないことや食後すぐ・飲酒後・服薬後の入浴を避けること、入浴前に同居人に一声掛けて意識してもらうことなども併せて要請している。
もしぐったりしたり、溺れたりしている人を発見した場合は、湯船の栓を抜いて大声で助けを求めるよう指示。可能であれば湯船から出して救急車を呼び、本人の肩をたたきながら意識があるか、反応と呼吸の状態を確認するよう求めた。必要であれば、胸骨圧迫や人工呼吸など救命行為を行うよううったえている。