2020年11月9日 がん患者、死亡直前に4割が痛み 緩和ケアの普及や技術開発が必要 がん研

がんで亡くなった患者の40.4%は、死亡するまでの1ヵ月間に痛みを感じていたことが、10月31日付けで公表された国立がん研究センターの調査で明らかになった。他の疾患と比べても、苦痛を感じると答えた割合が高いことも判明。センターは終末期医療の改善に向けて、緩和ケアの普及や更に苦痛を軽減させるための治療技術の開発、本人や家族に対し理解の促進を図るなど、対策を一層進める必要があるとしている。

調査は今年の1月から3月にかけて実施。2017年にがんや心疾患、じん不全などで亡くなった患者の遺族5万21人(うちがん患者の遺族は2万5974人)にアンケートを郵送し、2万1309人(同1万2900人)から有効な回答を得た。

亡くなる前の1ヵ月間で「苦痛があった」と答えたがん以外の人は、腎不全が37.8%、肺炎が29.1%、心疾患が25.3%、脳血管疾患が22.0%で、軒並みがん患者の割合を下回っていた。

がんで亡くなる1週間前に痛みがあった理由(複数回答)では、「医師はある程度は痛みに対処してくれたが、不十分だった」が20.7%で最も多く、「医師の診察回数や診察時間が不十分だった」(8.6%)や「医師が苦痛について質問しなかったので、痛みを伝えられなかった」(2.4%)が続いた。

さらに、亡くなる前の1ヵ月で精神的に「つらい」と感じた人では、がんが42.3%、腎不全が40.8%で、残りの疾患は2割から3割台だった。最後の1ヵ月を望んだ場所で過ごせたと答えた人は、どの疾患もおおむね3割から5割弱だった。場所ごとにみると、全て自宅で過ごせたケースが、病院や施設などを上回る傾向を示した。

一方、亡くなった場所で受けた医療について尋ねたところ、その満足度はがんが71.1%で最も高く、他の疾患も6割強から7割弱の水準だった。また、医療者がつらい症状に素早く対応していたと回答したがん遺族は81.9%。7割前後だったそのほかの疾患よりも割合が高かった。医師が行った本人への症状や治療内容の説明を十分だったと答えた人も、がんが78.3%で、6割台だったそのほかの疾患を上回っている。

このように、がんを中心に遺族には、最終段階で受けた医療に満足し、対応に好意的な印象を持っている人が比較的多かった。だが、最後の場所をどこで迎えるか、患者と医師の間で話し合いがあったとした人は、脳血管疾患が14.5%、肺炎が15.0%、心疾患が17.0%と1割台。腎不全(22.8%)やがんも(36.5%)低い割合にとどまった。

 

■ 死別後含めたケアも重要

そのうえ、がん患者の遺族の40.9%は、本人が亡くなる直前の介護について「全体的に負担感が大きかった」と回答。本人が亡くなった後に落ち込んだり、憂鬱を感じたりする「抑うつ症状」に悩まされた人が19.4%、長く「悲嘆」を感じる人も30.1%いた。このため、がん研究センターは、死別後も含めた家族への支援体制の整備が必要だとしている。


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