2020年11月5日 コロナ禍でビタミンD不足に 順天堂大准教授が日中屋外での活動など推奨

順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科・スポーツ診療科の齋田良知准教授は、アスリートのコンディショニング維持とパフォーマンスの向上を目的として、プロサッカー選手の血液データの解析を行っているが、今年の血中のビタミンD値を解析したところ、例年に比べて大幅に低くなっていることを確認した。この結果は、新型コロナウイルスの流行下の緊急事態宣言による野外トレーニングの制限が要因として考えられるため、アスリートだけでなく一般の人々にも当てはまることが予想される。ビタミンD値の低下は、アスリートのスポーツ活動再開時の疲労骨折や肉離れの発生が増加する可能性があることから、スポーツの指導者はこの事実を認識する必要がある。また、一般の人々の骨折や転倒による怪我の増加につながる恐れがあることから、ビタミンDの摂取と可能な範囲での日中屋外での活動が推奨される。

 

ビタミンD不足で疲労骨折

ビタミンDはアスリートだけでなく一般に日本人に不足しがちなビタミンで、食事からの摂取や日光浴により合成される。血中ビタミンD濃度の低下は、疲労骨折や肉離れの発生増加と関係があるとされ、新型コロナウイルスの流行に伴う外出自粛などの影響により、今年は特にビタミンDが不足し、これらの怪我の発生リスクが高くなっている恐れがある。

日本では新型コロナウイルス流行に伴い、今年4月7日に緊急事態宣言が発出され、人々の行動制限や外出の自粛が要請された。アスリートであるプロサッカー選手も例外ではなく、チームトレーニングの中止に伴い、野外トレーニングが制限されており、日照不足による血中ビタミンD濃度の低下が危惧された。

そこで西田准教授の研究では、シーズン中のプロサッカー選手のコンディショニング維持やパフォーマンスの向上を目的として定期的に計測している血液データのビタミンD濃度に着目し、濃度の推移を調べた。

研究では、日本のプロサッカークラブに所属する男子選手(2018年23人、2020年24人)の血中ビタミンD(25‐OHD)濃度を比較。その結果、2018年シーズン開始の冬、25‐OHDは平均29.7(ナノグラム/ミリリットル)だったが、シーズン中の春では36.0に増加した。

しかし、2020年シーズンは冬が23.8だったが、緊急事態宣言後のシーズン5月では21.8と逆に減少した。2018年と2020年、このクラブが活動している地域の日照時間には差はなかった。

2018年と20年では入れ替わっている選手も多いため、次に、2018年と2020年の両シーズン共にチームに所属していた7選手のみで解析。すると、2018年が26.8(冬)→34.8(春)、2020年が24.9(冬)→21.2(春)で、冬と春の25‐OHD値の差は2020年で有意に低値を示した。

これらの調査結果から、外出やトレーニングが制限された2020年は、屋外で競技を行うスポーツ選手のビタミンD値が例年よりも低くなっている可能性が示唆された。

一般に、25‐OHD値が30(ナノグラム/ミリリットル)より低値であると怪我の発生リスクが高くなるといわれている。アスリートのスポーツ活動の再開に伴い、疲労骨折や肉離れ等の発生リスクが高まっている可能性があるため、トレーニングの再開で注意する必要がある。さらに、スポーツの指導者はこの事実を認識し、怪我を防ぐために血中ビタミンDのレベルを維持することの重要性についてアスリートと共有することが肝心となる。

 

アスリートだけでなく一般の人々も該当

この研究で明らかになったサッカー選手の血中ビタミンD濃度の減少は、緊急事態宣言に伴う人々の行動制限や外出の自粛が要因として考えられるため、アスリートだけでなく一般の人々すべてに当てはまるといえる。冬に向かって日照時間が短くなる時期は、ビタミンD不足がさらに助長され骨折や転倒による怪我の発生が高くなることが危惧され、予防策としてビタミンDの摂取と可能な範囲での日中屋外での活動が推奨されるとしている。


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