厚生労働省は公式サイトで、発達障害があるためマスクを付けることが難しい人への配慮を呼び掛ける周知文を掲載した。困難な状況は、子どもだけでなく成人でも変わらないとするほか、フェイスシールドなどの代替方法も重度の知的障害など障害特性によって実施が難しい場合があると指摘。それぞれのケースに対し、国民へ理解を求めた。
発達障害がある人には、聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚等が非常に敏感な「感覚過敏」という特性を持つ人が多いとされている。状態や程度は人それぞれで、特性が日常生活に大きな支障をきたすことも多い。
世界保健機関(WHO)もマスク使用に関するアドバイスの中で、「発達上の障害や他の障害、またはマスク着用に支障をきたす可能性のある特定の健康状態をもつ子どもに対しては、マスクの使用を強制するべきではない」や「発達上の障害、その他の障害、またはその他の特定の健康状態のあるあらゆる年齢の子どもにマスクを使用することは必須ではなく、子どもの親、保護者、教育者、医療提供者、またはそのいずれかによってケースバイケースで評価されるべきである。 いずれの場合でも、マスクを容認することが困難な重度の認知障害または呼吸障害のある子どもは、マスクを着用する必要はない」としている。
■ マスク我慢・着用困難が56%
国の発達障害情報・支援センターの調査によると、発達障害のある人のうち56%はマスクについて、「我慢して着用している」もしくは「着用が難しい」と答えている。困難な理由では、「感覚過敏で、マスクが肌にふれることが不快」や「マスク自体の臭いや、マスクの中の臭いが不快」、「マスクをしていると、集中できず、判断力が下がる」など、主に触覚(肌)の過敏から困り感を示す人が多かった。
調査では、発達障害を持つ人にとって、マスク着用がコミュニケーションの妨げにもなることも判明。具体的には、「相手がマスクをしていると、表情がわからない」が44%(複数回答、以下も同じ)で最も多く、「相手がマスクをしていると聞き取りにくい時があるが、聞き返すことが難しい」(41%)や「相手がマスクをしていると、普段より、言われたことを理解するのに時間がかかる」(40%)、「マスクをしていると、どれくらいの大きさの声で話せばいいかわからない」(32%)といった回答が続いた。
保護者や家族に「新しい生活様式」に取り組む工夫を尋ねたところ、「、本人がつけ心地が良いマスクを手作りした」や「視覚的に分かりやすい素材を使って、感染予防(マスクをつける理由など)について説明した」といった、マスクの素材・形状が本人に合うものを探した/手作りしたという声が多かった。
そのほか自由記述では、「マスクなどの感染対策ができない事情を、周囲に理解してほしい」や「発達障害の人が感染対策を身につけるための方法を教えてほしい」などの意見が寄せられている。
調査は7月から8月の間、ウェブを通じて実施。無記名によるアンケートで、発達障害の当事者352人と保護者・家族500人の計852人分の答えを回収した