介護事業者の休廃業・解散が急増している。東京商工リサーチが8日に公表した新たなレポートで明らかになった。
深刻な人手不足に拍車をかけ、サービスの利用控えやコストの増加を招いた新型コロナウイルスの影響も大きいとみられる。倒産が過去最多のペースで推移していることも分かった。
レポートによると、今年1月から8月の介護事業者の休廃業・解散は313件。前年同期(263件)から19.0%増え、この時期としての過去最多を記録した。
事業がなかなか軌道に乗らず、体力が残っているうちに撤退を決めるところがある。東京商工リサーチは、「コロナ禍で業績が急激に悪化し、事業意欲が喪失したことも背景にある。通年の最多(2018年:445件)も更新しそうだ」とみている。
倒産に追い込まれるケースも目立つ。今年1月から9月で94件。こちらも前年同期(85件)を10.5%上回っており、通年での最多を更新する見通しだ。
倒産をサービスごとにみると、「通所・短期入所」が前年同期比25.0%増の30件。スタートアップも多く利用者の奪い合いが激化するなか、やはり競争に敗れるところが出てきている。業界一の人材難にあえぐ「訪問介護」は高止まり。前年同期比6.9%増の46件となっている。
倒産全体の約8割がこの2つのカテゴリ。従業員が10人未満など、小規模な事業者が大半を占めているという特徴もある。
「介護業界はもともと見切り発車の起業が多い」。東京商工リサーチはそう指摘し、コロナ禍が淘汰のトリガーになったと分析している。
「以前から経営不振に陥っていた事業者に、コロナ禍が重くのしかかる格好となった」と説明。「種々の支援策で何とか踏みとどまったところも多い。支援効果が薄まる年末以降、廃業や倒産が増える可能性も高い」と警鐘を鳴らしている。