バブル崩壊と大きく異なるコロナウイルス・ショック。誰もが予想すらしなかった疫病の感染拡大である。人生100年時代を迎え、より豊かな老後を送るための資産形成に狂いが生じた人が多いと推察する。低成長・低金利の継続や年金を巡る不安などが、老後の資産形成にある程度のリスク資産運用の必要性を後押ししているようだ。未だに語り継がれる老後資産2,000万円は、そのうち国民的合意となるかもしれない。
作家池井戸潤氏の作品「半沢直樹」や「陸王」、直木賞受賞した「下町ロケット」といすれもTVドラマで高視聴率だった。中でも続編として始まった「半沢直樹」の最終回平均視聴率は、関東地区で32.7%、関西地区で34.7%。テレビ離れが指摘される中で、NHKと民放のドラマ視聴率で30%超えは7年ぶりで、前作の半沢直樹の最終回以来という。現実離れした銀行員のストーリーだが、出演者のリアルに迫る演技に引き込まれたようだ。ところで、池井戸氏自身がリスク資産運用について、「自分自身のリスク許容度を見極め、身の丈にあった運用に心がける」と長期投資における「自覚と覚悟」の必要性を説いていた。マーケットでは聞き馴染んだ言葉である。しかし、作家のいう言葉に、数々のドラマに登場した人物の演技と台詞を連想するためなのか、市場関係者よりも不思議な説得力を覚える。
IMFの経済見通しでは、2020年の世界成長率はマイナス4.9%を予想し、「大恐慌以来の景気悪化」を発表。にもかかわらず多くの投資家は金融市場でリスクをとる姿勢を強めている。実体経済の回復期には、金融市場が先行して持ち直すケースが多いという経験則に基づく訳であろう。不況下の株高は、金融緩和による超低金利のもと、投資家の株式市場へ呼び込まれるコロナバブルの様相を呈している。ただ、金融相場が止まった瞬間から背筋を凍らせるようなリスクと背中合わせにあることの自覚も必要である。
さて、人生の白秋から玄冬にさしかかり、これまで走って来た路線から違う路線に乗り換えて日々を過ごす高齢者。済んでしまったことをくよくよする必要はないと思う。済んでしまったことを肯定しなければ老後の生活は成り立たない。コロナ禍も「まあ、しょうがない」で済ませる考え方も必要かもしれない。ニュー・ノーマルが常態化する生活様式に立ち向かう中で、半沢直樹の決め台詞じゃないが、現状の損失にめげることなく、倍返しの機会到来を待ちましょう!