新型コロナウイルスの感染拡大を受け、対面の「もの」や「こと」が急速にオンラインに取り替わった。学校の授業、イベントや発表会、面接・打ち合わせなど、その種類は多岐にわたる。病院や薬局も例外ではなく、政府は今年4月から初診も含めたオンライン診療の活用を時限的・特例的対応として認めた。
さらに、菅義偉首相は今月16日の組閣後会見で、この措置を恒久化するよう田村憲久厚生労働相に指示したことを明らかにしている。前厚労相であり、新内閣のスポークスマンとなる加藤勝信官房長官も25日の会見で菅首相の指示について、「社会全体でデジタル化を進めていく流れの中で、(特例措置の)恒久化が必要だという判断」と説明。「検証を進めつつ、効率的に質の高い医療を実現し、患者の立場に立って進めていくことが非常に大事だ」と語っている。
これに懸念の顔色を窺わせるのが、医師の職能団体である日本医師会である。中川俊男会長は24日の会見で、規制緩和の動きについて「慎重に議論すべきだ」と待ったをかけた。現行の措置は、あくまで「有事における緊急の対応だ」との認識も示している。
そのうえで、「今後の対応を検討するには、現行の特例措置を十分に検証して改めて安全性・有効性を確認すべき」と指摘。「利便性のみを優先するオンライン診療の拡大は、医療の質の低下につながりかねないため 容認できない」と主張している。
実際、オンライン診療の在り方を議論する厚労省の検討会でも、不十分な本人確認を要因とする「なりすまし」の可能性や、部屋の照明やPCのカメラ性能で診察結果が左右されてしまう危険性などが指摘されている。
政府と医師会の綱引きが、どのように決着するかは、現状まだわからない。厚労省は今後、コロナ禍の実績を調査したうえで、必要なルール整備に向け医師会と調整を急ぐ考えである。