長崎大学は、名古屋市に本社を置くベンチャー企業ラクオリア創薬との間で、9月から、新型コロナウイルス感染症に対する新規治療薬の共同研究を開始した。
新型コロナウイルス感染症(CIVID‐19)は現在、世界的規模で公衆衛生上の脅威となっており、治療薬の開発は喫緊に取り組むべき世界の最重要課題となっている。
しかしながら現時点で新型コロナ治療薬として国内外で承認された医薬品は米ギリアド・サイエンシズ社が開発した「レムデシベル」など、ごくわずかしかない。
こうした状況を踏まえ、長崎大は感染症共同研究拠点や熱帯医学研究所の安田二朗教授および櫻井康晃助教を中心に、ラクオリア創薬との間で、感染者体内での新型コロナウイルスの増殖を強力に阻害し、病気の発症や重症化を抑制する治療薬を創出すべく、共同研究に取り組むこととした。
今回のラクオリア創薬との新型コロナ治療薬の研究では、熱帯医学・感染症分野の研究で日本のみならず世界的にも先導的な立場にある長崎大の研究力が評価されたもの。
安田教授および櫻井助教は、エボラウイルス病などといった新興感染症の研究で、高い研究実績を有しており、世界レベルの感染症研究や治療薬の開発に携わっている。
今回開始した共同研究により、長崎大が有する細胞及び動物用いたウイルス学実験の技術と経験、新興感染症の研究で先行する豊富な知識と、ラクオリア創薬が有する低分子化合物の創薬研究に関するさまざまな知見と技術ノウハウを融合し、新型コロナ感染症に対する新たな治療薬の早期創出を目指す。
長崎大感染症共同研究拠点は、日本はもとより世界の安全・安心に寄与する日本全体の感染症共同研究拠点として機能することを目指している。
現在、整備が進められている極めて厳重な封じ込め構造を持つBSL‐4施設は、実験者が宇宙服型の陽圧機密防護服を装着し、前面開放型のセーフティーキャビネットで比較的自由に操作できる「スーツ型実験室」と呼ばれる世界標準の設備。
また、長崎大附属熱帯医学研究所は、特に、熱帯病の中でも最も重要な領域を占める感染症を主とした疾病と、これに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目指し、世界の関連機関と協力して、1)熱帯医学及び国際保健における先導的研究、2)研究成果の応用による熱帯病の防圧並びに健康増進への国際貢献、3)これらにかかわる研究者と専門家の育成の達成を目標としている。
名古屋市に拠点を有するラクオリア創薬(株)は、最先端の生命科学技術を活用し、医療分野においてニーズの高い疾患領域での新たな医薬品を生み出す「グローバル創薬イノベーター」を目指す、研究開発型のベンチャー企業。
独自のオープン・イノベーションから革新的な新薬の種となる低分子化合物医薬を創り出し、製薬会社等と共同研究あるいはライセンスアウト(知的財産権の使用許諾契約)により、真に価値ある新たな治療薬を患者に届けることを使命としている。