世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は22日の記者会見で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が医療体制に与える影響に関する調査結果を公表した。その結果、半数以上の国では、一般外来や入院など少なくとも1部門を制限・停止していたことがわかった。
WHOは世界の82ヵ国を対象に調査を行った。その結果、歯科やリハビリのサービスを部分的、あるいは完全に中断していた国は全体の約4分の3。非感染性疾患の定期予防接種や診断、治療などに支障をきたしていた国は約3分の2に上った。
さらに、全体の半数以上がメンタルヘルス障害や出産前ケア、がんの診断と治療、病気の子供たちへのサービスといった部門で問題を抱えている。WHOは、「調査対象の国では、トリアージや遠隔医療、患者の代替医療施設への移送などをはじめ、パンデミックへの対策が取られているものの、こうした混乱は今後何年にもわたって続く可能性がある」としている。
WHOによれば、21日に世界で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は18万3000人以上とこれまでで最多。報告された症例は880万件を超えており、死者はのべ46万5000人にのぼるとされている。増加の原因は、一旦封じ込めに成功した国が、社会・経済活動を再開したことによるものだと考えられている。
■ 事務局長、デキサメタゾンの増産呼び掛け
また、事務局長は会見で、新型コロナウイルスの重症患者に効果があるとされているステロイド薬の「デキサメタゾン」の増産に急ピッチで取り組むよう諸外国へ呼び掛けた。英国での試験結果から需要はすでに急増していると指摘。一方、価格が安価なこと、世界中に製造を取り扱う医薬品メーカーが存在することから、増産は可能だと述べた。
今後は、「増産したデキサメタゾンを、世界中へ迅速かつ平等に分配することを目指す」と発言。一方で、粗悪品や偽造品が出回るリスクが高いことから、サプライヤーは品質を保証する必要があるとした。そのほか、使用は厳重な臨床的管理下で、対象は重度または重篤な患者にのみ絞るよう指示。「軽症患者への効果や予防の効果はなく、かえって健康被害を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らしている。