2015年秋、簡易書留で12桁の個人番号の通知カードが世帯主に送られてきた。マイナンバー制度の始まりである。翌年1月以降から写真付きでICチップに氏名や住所などの情報が記載されるマイナンバーカードの作成申請をした。随分待たされたあげく交付を受けて5年が経過。この間、会社から税控除手続きと、証券会社から口座継続のために個人番号の届出を求められただけで、それ以外はタンスの奥で眠ったままのカードである。住民票などの証明証取得における利便性だけでは、カードの持つメリットが乏し過ぎたという訳か。
消費増税対策のポイント還元にマイナンバーカードの利用が俎上にあがったが、すぐに立ち消えとなった。キャッシュレス決済の普及に向けたポイント還元事業が6月末終了し、オリンピック後の9月からのマイナンバーカードによるポイント還元が復活予定である。しかし、オリンピックが延期となった今、それもどうなることやら。ただポイント還元狙いのカード交付だけでは、カード普及率の改善には疑問が残る。マイナンバー制度本来の目的からは逸脱していると思えてならないからだ。
ところで、昨年5月に成立した改正健康保険法でマイナンバーカードが健康保険証の代用として使用可能となる。2021年3月までに利用開始を目指すという。また、更に2年後の2023年度から介護保険証もマイナンバーカードに一本化されるという。ただ、このカードを使う場合、電子証明書としての有効性確認のため手数料が発生する。この手数料(現行2円)が保険証代用の普及の妨げになるとの懸念もあるようだ。
さて、高齢者川柳の「眼には蚊を耳には蝉を飼っている」ではないが、高齢者の医者通いは年齢とともに増えていく。その都度提示を求められる健康保険証と高齢受給者証と限度額適用認定証である。それがマイナンバーカード1枚で済むならば、まちがいなく健康保険組合の事務の効率化と保険証発行の事務コスト削減につながるだろう。台湾のマイナンバーカードは個人の医療情報までわかるそうだ。わが国のIT戦略の遅れを痛感させられる。感染拡大が止まない新型コロナウイルス。当初7都府県に発出された緊急事態宣言も全国に拡大した。政府は1所帯2枚のマスクと国民一律10万円の現金給付を行う。本当に検討されるべきは休業を余儀なくされた中小企業の事業持続に向けた助成や補助かもしれない。その際、納税に紐付きのマイナンバーカードにも出番があるかもと素朴な疑問を抱きつつ、オンラインシステムのマイナンバーカードの名誉挽回なるかと思った次第。いずれにせよ財布の中のいろんなカードの枚数を減らせる世の中を期待したいものだ。